<記載日:2025年9月1日>
前回の記事では、ガソリン税の仕組みを確認しましたが、その中で消費税がガソリン税や温暖化対策税を足した後の合計額にもかかっている、つまり「二重課税」になっている、と書かせていただきました。
今回は、その「二重課税問題」について、少し考えてみたいと思います。
1.二重課税ってそもそも何?(前回記事の内容確認)
ガソリン代には、
①ガソリン税(揮発油税+地方揮発油税)
②地球温暖化対策税がまず課されます。
そして、この「ガソリン価格+税金」の合計額に、さらに消費税(10%)が上乗せされます。
これがいわゆる二重課税の仕組みです。
たとえばℓあたり 160円のガソリン価格の中には、
・税金部分だけで約56円(ガソリン税+温暖化対策税)
・その合計に消費税が約14円
が含まれています。
つまり、税金に税金をかけているわけです。
2. なぜ問題視されるのか
・家計負担が不透明
「ガソリン価格が高い」と感じても、その中の税金割合が把握しづらい。
・物価への波及効果
ガソリン代は物流コストに直結し、食品や日用品の価格にも影響する。
・税の公平性の観点
消費税は本来、モノやサービスの「価値」にかかる税ですが、ここでは既に課税された税金にまでかかっている。
3.なぜ解消されないのか?(政治・財政の背景)
二重課税が問題視されても、なかなか制度改正が進まない理由は複合的です。
<理由①>巨額の税収確保が優先
・ガソリン税とその上の消費税は、国と地方にとって重要な税収源です。
・揮発油税は、道路特定財源から一般財源化されており、道路整備以外にも広く使われています。
・消費税部分も含めると、年間数兆円規模の財源となっており、簡単には減らせません。
<理由②>政治的調整コストの高さ
・ガソリン税は全国民に影響するため、税率変更や二重課税解消は政治的に大きな争点になります。
・財務省や国交省、環境省など複数省庁が関与しており、合意形成が難しい。
・「減税=財源穴埋め」の議論が必ず伴い、他税目や予算削減とセットで考えなければならない。
<理由③>一度手を付けると他の税制議論に波及
・二重課税の解消は、消費税の課税範囲全体の見直しを呼び込みます。
・他の税目(酒税、たばこ税など)でも同様の議論が出る可能性があり、政府としては前例を作りたくない面があります。
4.今後の展望
・短期的には、補助金やトリガー条項発動による価格抑制策が続く可能性大
・中長期的には、脱炭素・EV普及によるガソリン需要減に伴い、ガソリン税収減を補う新たな課税方式(走行距離課税など)への移行議論が加速
・二重課税解消は、「税体系全体の見直し」とセットでなければ実現しにくい
5.まとめ
ガソリン税の二重課税問題は、表面的には「家計負担の話」ですが、その奥には国家財政の根幹や税制の哲学が絡んでいます。
だからこそ、解消には時間がかかり、単なる減税議論では終わりません。
家計防衛のためには、制度改正を待つよりも、
燃費改善・カーシェア活用・車の保有コスト全体の見直しといった、自衛策を先に進めるほうが現実的です。
ということで、今回はこれくらいにさせていただき、次回は「ガソリン税とEV時代…税収減にどう備えるか」をテーマに、脱炭素社会と税制の関係について考えてみます。
次回以降も、引き続きよろしくお願いいたします。