フリーランス・副業ワーカー・個人事業主、そして「ひとり会社」(1人社長)の方にとって、年末は節税のチャンスが最も大きい時期です。
必要経費の計上、固定資産の購入時期、青色申告の準備、消費税の対応など、12月中に判断しておくことで、翌年の税負担を大きく抑えられます。
本記事では、初心者の方でも取り組みやすいように、年末に押さえておくべき実務ポイントを分かりやすく整理します。
1. 必要経費は「年内に支払った日」が重要
個人事業主の経費は現金主義ではなく、基本は発生主義ですが、多くの支払いは「実際に支払った日」で経費にできます。
年末に確認したい支払いは次のとおりです。
- サーバー代・ソフト代・サブスク費用
- 事務用品の購入
- 教材・オンライン講座
- 仕事で使うスマホ・タブレット
- 支払っていない経費(振込忘れ)の整理
年内に支払うことで、2025年分の経費として計上でき、所得税・住民税の負担を抑えられます。
2. 固定資産(パソコン・カメラ・機材など)は“買うタイミング”で税負担が変わる
仕事で使うパソコン・カメラ・デスク・モニターなどは、10万円以上の場合は原則「減価償却」になります。
しかし、以下の制度を活用すると、購入した年に全額経費化できる場合があります。
● 中小企業等経営強化税制
一定の設備投資について即時償却が可能。
● 少額減価償却(10万円未満)
購入価格が10万円未満なら全額経費。
● 一括償却資産(10万円以上20万円未満)
3年で均等に経費化。
年末に設備投資をするなら、即時償却ができるかどうかを確認し、買う日を調整することが節税のポイントです。
3. 青色申告は「65万円控除」を確実に使う
青色申告のメリットは圧倒的で、
- ① 青色申告特別控除(最大65万円)
- ② 赤字を3年間繰り越せる
- ③ 家族への給与を経費にできる(青色事業専従者給与)
などが挙げられます。
特に65万円控除は、年末に次の点を満たしているかが重要です。
- 複式簿記で帳簿をつけているか
- 電子申告を予定しているか
- 事業用口座・事業用クレカを分けているか(記帳効率化)
年末に帳簿を整理し、事業とプライベートのお金を分けるだけで控除のハードルは大きく下がります。
4. 売上が1,000万円に近い人は「消費税」の判定を忘れずに
個人事業主で売上高が1,000万円を超えると、2年後に消費税の納税義務が発生します。
年末に確認したいポイントは次のとおりです。
- 2025年の売上が1,000万円を超えるか
- 2026年にインボイスを発行する必要があるか
- 免税を継続したいなら売上調整が必要か
とくにインボイス制度の影響で、「免税か課税か」は仕事のスタイルに直結します。
年内に見通しを立てておくことが重要です。
5. ひとり会社(1人社長)は「役員報酬の調整」と「福利厚生の範囲」が重要
法人化している場合、個人事業主とは節税のポイントが異なります。
(1) 役員報酬は「年に1回だけ」見直せる
役員報酬は決算期の期首に設定し、その後は基本的に変更できません。
年末は「来期の役員報酬」を検討する最後のチャンスです。
- 役員報酬を上げると会社の利益は下がる
- 役員報酬を下げると個人の税金が下がる
- 節税と社会保険料のバランスが重要
ひとり会社では世帯全体の手取りで判断する必要があります。
(2) 福利厚生費として認められる支出の判断
- 仕事で必要な研修費
- 社長自身の健康診断費用(条件付きで可)
- レンタルオフィス代
- 事業に必要な道具やソフト費用
個人的な支出を福利厚生費に入れてしまうと税務調査で否認されるため、用途の明確化・領収書の保存が重要です。
6. 法人成りの検討は「年末〜2月」が最適
副業が順調であったり、収入が増えてきたりすると“法人成り”を検討するタイミングが訪れます。
判断のポイントは次の3点です。
- 課税所得が500万円〜800万円に近い
- 経費として使える支出が多い(業務委託が多い等)
- 家族への給与を最適化したい
個人事業主のままか法人化するかは、税と社会保険料のバランスで変わります。
年末に利益見込みが把握しやすいため、判断がしやすい時期です。
7. 年末にやるべきチェックリスト
以下をチェックすれば、年末の節税対策はほぼ完了します。
- 経費の支払い漏れはないか
- 固定資産の購入は年内が有利か
- 売上1,000万円のラインを超えそうか
- 青色申告の帳簿は間に合うか
- 役員報酬の設定は適正か(ひとり会社)
- 法人成りの判断材料がそろっているか
これらを年末にまとめて整理すると、翌年の税負担が大きく変わります。
結論
個人事業主・ひとり会社の年末は、税負担を軽くし、翌年の経営をスムーズにするための最重要時期です。
- 経費の支払いは「年内に手続きを済ませる」
- 設備投資は即時償却など税制を確認してタイミングを調整
- 売上1,000万円のラインは必ずチェック
- 青色申告・電子帳簿保存法の準備
- 法人は役員報酬の見直しを検討
これらを押さえるだけで、翌年の手取りと資金繰りが大きく改善します。
忙しい12月ですが、少しの作業が大きな効果につながるため、無理のない範囲で取り組んでみてください。
出典
・国税庁「個人事業者の必要経費」
・国税庁「減価償却資産の取扱い」
・中小企業庁「中小企業経営強化税制」
・国税庁「消費税の課税事業者判定」
・各種公表資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
