国土交通省が2025年度中に閣議決定する新たな「住生活基本計画(2035年度まで)」で、住宅ローン減税の適用基準として長年維持されてきた「50平方メートル以上」という面積要件を「40平方メートル程度」に引き下げる方針が示されました。
狭小住宅やコンパクトマンションにも減税の恩恵を広げ、資材高騰や住宅価格の上昇で負担が重くなった家計を支援する狙いがあります。
1. 現行制度と「50㎡ルール」
現在の住宅ローン減税は、住宅の取得や新築時にローンを利用した人が年末の借入残高の一定割合を所得税・住民税から控除できる制度です。
現行では、原則として床面積50平方メートル以上が対象です。ただし、世帯の合計所得が1,000万円以下の場合には新築住宅に限り40平方メートル以上でも対象となる特例が設けられています。
控除率は年末残高の0.7%、控除期間は新築住宅で13年・中古住宅で10年です。
2. 新計画での「40㎡」転換と背景
新たな住生活基本計画では、「2人世帯、3人世帯、4人世帯いずれも40平方メートル程度を上回る住宅の供給・流通を推進する」と明示。
従来の「両親と子2人で50平方メートル」という基準から大きく転換する内容です。
背景には、単身世帯や高齢夫婦世帯の増加という社会構造の変化と、住宅価格の高騰があります。
実際、分譲マンションの平均床面積は2001年の95平方メートルから、2024年には70平方メートルまで縮小しました。
今後は、小規模住宅や都市部のマンションでも住宅ローン減税を受けやすくなり、より現実的な基準へと見直されます。
3. 関連税制への波及も
この面積基準は、住宅ローン減税だけでなく、不動産取得税の軽減措置や登録免許税の特例、さらには住宅取得資金贈与の非課税制度の対象基準にも共通して用いられています。
したがって、基準引き下げによりこれらの優遇措置の対象が広がる可能性もあります。
特に26年度以降の税制改正議論では、中古住宅支援の拡充や新築・中古間の差の是正が焦点となりそうです。
中古住宅はすでに流通全体の約4割を占めており、今後は中古住宅市場への税制支援が一段と重視される見通しです。
4. 注意点と課題
一方で、居住面積の引き下げには「健康で文化的な生活の基盤を縮小するおそれがある」との慎重論も出ています。
国交省の審議会では、ライフステージに応じた住み替え支援策や、最低居住水準の維持も同時に検討すべきとの意見が相次ぎました。
また、国交省が示す面積は壁芯面積であり、登記簿上の床面積とは異なります。実務上は壁厚分を差し引いた「内法面積」で確認する必要がある点にも注意が必要です。
結論
住宅ローン減税の面積要件をめぐる見直しは、単なる「狭い家でもOK」という話にとどまりません。
人口構造の変化、都市部の住宅事情、そして税制の公平性を踏まえた制度設計の再構築が始まったという意味を持ちます。
26年度以降は、ローン減税だけでなく、不動産取得税や贈与税の優遇措置も含めた「住宅税制全体のパッケージ見直し」が進む可能性があります。
小規模住宅や中古住宅を検討する世帯にとって、今後の制度改正の方向性は見逃せません。
出典
・日本経済新聞「マンションの住宅ローン減税、適用拡大」(2025年11月13日)
・日本経済新聞「住宅ローン減税 来年以降の措置、議論へ」(2025年11月13日)
・国土交通省「住生活基本計画(案)」関連資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

