家計見直しの新常識:食費節約の限界と、教育費・住居費の再点検

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物価高が長引くなか、多くの家庭が「節約」を意識して生活を見直しています。なかでも真っ先に削られるのが食費ですが、実はすでにその節約余地は限界に近づいているとも言われています。支出全体のバランスを保ちながら家計を立て直すには、食費以外の支出に目を向けることが重要です。

1. 食費節約は限界に近い

総務省「家計調査」によると、2025年1~8月の実質食費支出は前年同期比で1.4%減少しました。値上げが続くなかで購入量を減らした結果です。ファイナンシャルプランナーの畠中雅子氏は「食費は手取り月収の12~15%が目安。すでに多くの家庭がこの水準に達しており、10%を切るような“やりすぎ節約”のケースも見られる」と指摘しています。

一方、安価な食材とされてきた鶏肉も値上がり傾向にあります。総務省「消費者物価指数」では、2025年9月の鶏肉価格が前年同月比10.6%上昇と、肉類の中で最も高い伸びを示しました。単に「安い食材を選ぶ」だけでは家計改善の効果が持続しない局面に来ているといえます。


2. 教育費:見えにくい支出増

家計の中で増加が目立つのが教育費です。高校授業料の無償化が進んでも、塾や習い事といった自己負担部分が支出を押し上げています。これらの支出は過去10年以上にわたり上昇を続けています。

畠中氏は「大学卒業までの教育費を見据えて、塾や模試にどれだけ投資するかを冷静に考える必要がある」と助言します。短期的な成果を優先するあまり、長期の学資準備を圧迫してしまう家庭も少なくありません。

また、SOMPOインスティチュート・プラスの小池理人研究員は「AI教材やオンライン学習の普及により、質を落とさずコストを抑える方法が増えている。教育費の“配分の見直し”こそが次の課題」と指摘しています。


3. 住居費:最も効果が大きい支出削減

家計の中で固定費の割合が大きいのが住居費です。東京都23区に住む50代会社員が「家賃を月4万円削るために同区内で住み替えを検討している」というように、住居費の見直しは実際的かつ効果的な選択肢です。

不動産に詳しいFPの渕ノ上弘和氏は「現時点で最も支出削減効果が大きいのは住み替え」と強調します。総務省調査では、23区に比べ横浜市や大阪市の家賃は3~4割安く、一部地方都市では3分の1程度です。中古マンション価格も23区に比べて5割近く低く、リモートワークや通勤負担を考慮して郊外への移住を検討する価値があります。

短期的な住み替えでも教育費のピーク時期を乗り切る効果があり、家計全体の安定につながります。


4. 支出削減から「増収」への発想転換

支出をいくら見直しても、収入が伸びなければ家計の改善には限界があります。厚生労働省「毎月勤労統計調査」では、2025年9月まで実質賃金が9カ月連続でマイナス。物価上昇が賃上げを上回っています。

第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「副業や資産運用を含め、勤務先の賃上げに頼らない増収策を真剣に考える時期」と提言します。支出の見直しだけでなく、収入源の多様化が次のステップとして求められています。


結論

食費の節約はもはや限界に近づいています。これからの家計管理では、「どこを削るか」ではなく「どこを効率化し、どう増やすか」が鍵です。教育費の質とコストのバランスを見直し、住居費を戦略的に調整する。そして副業・資産運用など新たな収入機会を積極的に取り入れることで、物価高時代を乗り切る現実的な家計の再設計が可能になります。


出典

・日本経済新聞「家計見直し 教育・家賃に注目」(2025年11月8日)
・総務省「家計調査」「消費者物価指数」
・厚生労働省「毎月勤労統計調査」
・東京カンテイ、小売物価統計調査
・SOMPOインスティチュート・プラス、小池理人上級研究員コメント
・第一生命経済研究所、熊野英生首席エコノミストコメント


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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