個人事業主やフリーランスにとって、青色申告特別控除は最も重要な節税制度の一つです。
正しく帳簿を作成し、期限内に確定申告を行えば、最高で65万円の所得控除を受けられます。
さらに、2020年以降の税制改正では、電子申告(e-Tax)や電子帳簿保存法対応が控除額に直結するようになりました。
今回は、青色申告特別控除の要件と、電子帳簿保存法の最新実務を整理します。
青色申告特別控除とは
青色申告を行う個人事業主が、一定の帳簿要件を満たした場合に、所得から差し引ける控除制度です。
白色申告と比較して、節税効果が大きく、経理面でも信頼性が高まります。
| 区分 | 控除額 | 条件 | 
|---|---|---|
| 65万円控除 | 最大65万円 | 複式簿記で帳簿作成+e-Taxまたは電子帳簿保存対応 | 
| 55万円控除 | 最大55万円 | 複式簿記で帳簿作成(紙提出) | 
| 10万円控除 | 最大10万円 | 簡易簿記で記帳(単式簿記) | 
帳簿の正確性と申告方法(電子申告・電子帳簿保存)が控除額に大きく影響します。
適用条件の詳細
65万円控除を受けるには、次の3つの条件をすべて満たす必要があります。
- 複式簿記による帳簿作成
貸借対照表・損益計算書を含めた正規の簿記で記帳すること。 - 期限内申告
確定申告の法定期限(原則3月15日)までに申告すること。 - 電子申告または電子帳簿保存の実施
e-Taxによる申告、または電子帳簿保存法に準拠した電子記録保存を行うこと。 
いずれかの要件を欠くと、控除額は55万円または10万円に減額されます。
電子帳簿保存法対応とは
電子帳簿保存法は、帳簿書類を紙ではなく電子データで保存できるようにした法律です。
2022年の改正で大幅に緩和され、申請制から自己承認制に変わりました。
【電子保存の3区分】
- 電子帳簿保存:会計ソフト上で作成した帳簿を電子のまま保存
 - スキャナ保存:紙の領収書・請求書をスキャンして保存
 - 電子取引データ保存:メール添付・クラウド請求書など電子的に授受したデータを保存
 
特に③の電子取引データ保存は義務化されており、電子取引を紙印刷で保存する方法は2024年で廃止されました。
電子帳簿保存の実務ポイント
青色申告特別控除の65万円を確実に受けるためには、電子帳簿保存法対応が欠かせません。
実務では次の点を押さえておきましょう。
- タイムスタンプの付与または改ざん防止機能のある会計ソフトを利用
 - 検索機能(取引年月日・金額・取引先)を確保
 - クラウド会計ソフト(freee、弥生オンライン、マネーフォワード等)は対応済み
 - スキャン保存の場合、原本と同等の画像解像度で撮影・保存
 - 電子取引データ(請求書PDF・領収書メールなど)は削除せず、7年間保存
 
これらの要件を満たしていれば、紙保存の義務は不要となります。
e-Taxを活用した青色申告の流れ
- 会計ソフトで複式簿記の帳簿を作成
仕訳帳・総勘定元帳・決算書を自動生成。 - e-Taxソフトまたは国税庁「確定申告書等作成コーナー」で電子申告
マイナンバーカード方式で送信する。 - 控除欄に「青色申告特別控除額 65万円」を記載
自動で判定されるケースもある。 - 電子帳簿保存の要件を満たしている場合は、紙書類の提出不要。
 
青色申告決算書や仕訳帳をデータ保存しておけば、税務調査時にも提出対応がスムーズです。
よくある誤りと注意点
- 紙で申告したのに65万円控除を記載してしまう → 実際は55万円控除となる
 - 電子帳簿保存を名乗りながら、検索機能を確保していない → 要件不備
 - 電子取引データを印刷保存のみ → 2024年以降は法令違反に該当
 - 申告期限を過ぎて提出 → 控除額10万円に減額
 
65万円控除を維持するには、電子申告+電子保存の両立が前提です。
今後の動向
令和7年度税制改正では、電子帳簿保存制度をさらに簡素化する方針が示されています。
AIによる自動仕訳や電子証憑の自動分類が普及し、「入力不要の青色申告」が実現しつつあります。
今後は、クラウド会計ソフトの利用が青色申告の標準となる見込みです。
結論
青色申告特別控除の65万円を確実に受けるには、
「複式簿記」「期限内申告」「電子申告または電子帳簿保存」の3点を満たすことが必須です。
電子帳簿保存法の対応を早めに整備すれば、業務効率化と節税の両方を実現できます。
フリーランス・個人事業主にとって、デジタル化は「負担」ではなく「利益」へとつながる重要な経理改革といえるでしょう。
出典
・国税庁「No.2070 青色申告特別控除」
・国税庁「電子帳簿保存法Q&A」
・デジタル庁「電子取引データ保存の義務化について」
・令和7年度税制改正大綱(2024年12月)
・中小企業庁「青色申告制度の概要」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
  
  
  
  