2025年10月31日、日経平均株価はついに5万2000円の大台を突破しました。前日比1085円高の5万2411円と3日連続で史上最高値を更新。月間でも7478円高と過去最大の上げ幅を記録し、まさに「高市相場」と呼ばれる熱気が市場を包んでいます。
なぜこれほど急速に株価が上昇しているのか。その背景には、政策期待・海外マネー・AIブームという三つの要素が複雑に絡み合っています。
1.政策期待が生んだ「高市トレード」
今回の相場をけん引したのは、高市早苗首相の就任をめぐる政策期待です。
同氏は総裁選時から「積極財政」「金融緩和継続」を打ち出し、就任直後の所信表明でも「強い経済」というフレーズを繰り返しました。防衛力強化を明確に打ち出したことで、防衛関連株の三菱重工業やIHIなどが急騰。「高市トレード」と呼ばれるテーマ株相場を生み出しました。
こうした「政策主導型の株高」は、2000年代の小泉政権期や2012年の安倍政権発足時にも見られた現象です。ただ、今回の上昇ペースはそれらを上回ります。高市氏の総裁選勝利直前からわずか19営業日で日経平均は15%上昇し、小泉・安倍両政権時の同時期を上回るスピードとなりました。
2.海外投資家が主役に
東京証券取引所のデータによると、海外投資家は10月第1週から4週間で現物株を3兆円超買い越しました。国内勢を大きく上回る勢いで、「買い手不在」といわれてきた日本市場に久々に海外資金が流入しています。
背景には、高市政権への高い支持率や防衛費増額など、政策の実行力に対する期待感があります。ノムラ・シンガポールの須田吉貴氏は「小泉政権発足時に迫る内閣支持率と、明確な政策メッセージが海外勢の好感を呼んでいる」と指摘します。
海外投資家の関心が再び日本株に向かうのは、低金利環境・円安・企業のガバナンス改革進展といった中長期的な要因も後押ししています。とくに円安進行が輸出企業の業績改善期待を高め、AI関連銘柄とともに買いの流れを強めました。
3.世界的に見ても異例の強さ
10月の株価上昇率は17%と、1976年以降で2番目の高さでした。米S&P500種指数(+2%)や英FTSE100(+4%)を大きく上回り、主要20カ国中ではアルゼンチン(+58%)・韓国(+20%)に次ぐ3位です。
いずれの国も「政権交代や政策期待」が株価を押し上げた点で共通しています。市場は政治の安定と政策の明確さを好み、改革シグナルが強いほど株価が反応する構図が浮かび上がります。
4.過熱の兆しと今後の焦点
一方で、「期待先行」との警戒も強まっています。高市政権は少数与党の下にあり、財政拡大や防衛費増額といった政策をどこまで実行できるかは未知数です。急ピッチの株高の反動も想定され、11月以降は持続性が問われる局面に入ります。
政策の裏付けとなる財源改革、租税特別措置の見直し、社会保障費抑制などの議論が本格化するなかで、株式市場が「実行フェーズ」をどう評価するかが焦点です。短期的には調整を挟みつつも、中長期では構造改革の具体化が次の上昇局面を左右すると考えられます。
結論
5万2000円台への到達は、単なる株価上昇ではなく、「政策期待」「海外資金」「技術革新」の三つが交差した象徴的な出来事です。
高市政権の掲げる「強い経済」が具体的な成果を示せるかどうか、そして市場がそれを信じ続けるか――。日本株の本当の正念場は、むしろこれから始まるといえるでしょう。
出典
・日本経済新聞「日経平均初の5万2000円台 高市相場、10月上げ最大」(2025年11月1日)
・東京証券取引所統計資料(2025年10月)
・ノムラ・シンガポール 須田吉貴氏コメント(同上記事より引用要約)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

