実践!インフレ最適の家計戦略 現預金を“活かす”家計の防衛術

FP
緑 赤 セミナー ブログアイキャッチ - 1

「投資に回すお金なんてない」「まずは貯金が優先」。
そう感じる方も多いでしょう。
しかし、インフレが続くいま、現金だけを持つことこそ最大のリスクになっています。

本稿では、これまで見てきた「防衛としての投資」を踏まえ、実際の家計管理・運用設計にどう落とし込むかを具体的に整理します。
キーワードは――“現預金を減らす”のではなく、“活かす”
いまあるお金を、インフレに強い家計へと再構築するための実践戦略です。


1. 家計の全体像を整える ― キャッシュフロー表の再点検

現預金の「役割」を2つに分ける

まず大切なのは、「現預金をどの目的で持つのか」を明確にすることです。
現金には大きく分けて2つの役割があります。

区分目的目安金額管理のポイント
生活防衛資金(守り)病気・失業などの緊急時対応生活費の6か月分程度普通預金で確保
運用準備資金(攻め)投資や分散運用の原資余剰資金の範囲目的別に分けて管理

このうち「運用準備資金」を使い、徐々にリスク資産へ移していくのが“インフレ最適化”の第一歩です。

家計バランスシートの見直し

次に、家計全体の資産と負債のバランスを点検しましょう。
特に住宅ローンや自動車ローンなどの金利を見直すことで、「支出面のインフレ耐性」を高めることができます。
固定金利への切り替えや繰上返済の検討も、リスク分散の一環です。


2. 「防衛投資」チェックリスト ― 実践行動に落とし込む

インフレ最適家計をつくるための具体的ステップを、5つのチェックリストに整理します。

✅ ① 新NISAを活用する

  • 積立投資枠では「インフレ連動性」のある株式・インデックスファンドを中心に。
  • 成長投資枠では高配当・実物資産関連ETFを活用。
  • 「非課税で守る」ことが最大の防衛になります。

✅ ② 外貨を持って円安リスクを分散

  • ドル建て・ユーロ建ての外貨MMFや外貨預金を少額から。
  • 為替の上下を恐れすぎず、「通貨の保険」と割り切る。

✅ ③ インフレ対応の保険を見直す

  • 医療・介護保険は“将来の物価上昇”を考慮して設計を見直す。
  • 長期保障タイプはインフレ下で給付金の実質価値が下がりやすいため注意。

✅ ④ 住宅・不動産の防衛策

  • 固定金利ローンはインフレに強い。低金利の今が見直しの好機。
  • 不動産投資やREITの小口購入で「生活インフラの一部を資産に」。

✅ ⑤ 家計の「定率取り崩し」ルール

  • 老後資金を取り崩す際は「毎年3〜4%を上限」に。
  • 市場変動に応じて柔軟に取り崩し率を調整することで、長期の資金寿命を守れます。

3. 老後とライフプラン ― インフレを前提に設計する

名目ではなく「実質」で考える

将来の年金や退職金も、名目額ではなく物価上昇後の実質購買力で捉える必要があります。
たとえば、毎年2%のインフレが20年続けば、現金1000万円の価値は約670万円相当に目減りします。

そのためには、

  • iDeCoや企業DCを「インフレ耐性型ファンド」へ見直す
  • 公的年金+自助努力で「実質利回り2%」を目指す
  • 定年後も“運用しながら取り崩す”仕組みを作る

といった中長期設計が欠かせません。


結論 ― 「お金を寝かせない家計」へ

かつては「貯めること」が美徳でした。
しかしインフレの時代、貯めるだけではお金の価値を守れません。

これからの家計運営で大切なのは、

  • 現預金の役割を整理して、
  • 少しずつ資産を動かし、
  • 家計全体を“インフレ対応型”に整えること。

投資は決して特別な行為ではなく、お金を眠らせず働かせる生活防衛の知恵です。
私たちの家計もいま、静かに「デフレ最適」から「インフレ最適」へと進化し始めています。


出典・参考:

  • 日本経済新聞「家計は『インフレ最適』に移行」(2025年10月28日付)
  • 日本銀行「資金循環統計(2025年6月末時点)」
  • 金融庁「新しいNISA制度の概要」
  • 厚生労働省「確定拠出年金制度の運用状況」
  • 総務省「消費者物価指数(CPI)」

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました