<記載日:2025年7月16日>
今回のスタディグループの講義は、今年度の税制改正の1つであります iDeCo の改正事項のうち、受取時のルールが「5年ルール」から「10年ルール」に変更となりました件について、どのように受け取るのが良いのか、一緒に考えることによって、理解を深めていきたいという主旨で行ないました。
今回の記事でも、前回に引き続き、内容をご連携させていただきます。
全体の資料は、こちらになります。
また、全体の資料は24ページにもおよびますので、説明箇所のページを1枚ずつ添付し、説明させていただきます。
それでは、9枚目のスライドをご覧ください。
このスライドは「5年ルール」と「19年ルール」の説明です。
まず、退職金と確定拠出年金を一時金で受け取る場合、原則、「勤続年数」と「加入者期間」の重複期間を除いて、退職所得控除の金額を計算します。
スライドの原則的な退職所得控除の箇所を見ていただきたいのですが、例えば、「勤続年数」が25歳から60歳までの35年、「加入者期間」が40歳から65歳までの25年とした場合、重複している期間は40歳から60歳までの20年間ですので、退職金を一時金で受け取る時、退職所得控除の計算は「勤続年数」はフルの30年で計算しても良いのですが、
確定拠出年金を一時金で受け取る場合、退職所得控除の計算は「加入者期間」25年から重複期間20年を引いた5年で計算することになります。
ただし、特例として、その受取りの順番によって変わりますが、5年あるいは20年空いていれば、その重複期間も含めて退職所得控除を適用できるということです。
例えば、先程の原則的な事例で、確定拠出年金の退職所得控除は重複期間を引いた5年で計算しなければならなかったところが、もし、特例が当てはまるのであれば、重複期間を差し引く必要がないので 25年で計算しても良いことになるわけです。
つまり、それぞれ「勤続年数」と「加入者期間」で退職所得控除の金額を計算することができます。
この特例のことを、それぞれ「5年ルール」、「19年ルール」と言っているわけです。
そして、2025年度税制改正により「5年ルール」が「10年ルール」に改正となりました。
具体的に言いますと…
先に確定拠出年金を一時金で受け取り、後で退職金を一時金で受け取る場合、前の受け取りから「5年空いていれば」、それぞれで重複期間も含めて退職所得控除を適用できるということだったのですが、この「5年空いていれば」というのが「10年空いていれば」に変わったわけです。
このことで、今まで iDeCoや企業型確定拠出年金を60歳に一時金で受け取って、その後、65歳まで働ける会社が増えてきたので、65歳で退職金を受け取ることで「5年ルール」が使える!
と思っていた人が「10年ルール」に変わったら 70歳で退職金を受け取らなければならない!
70歳まで働ける会社は、国が推奨はしているものの、まだまだ少ない!
じゃあ、「10年ルール」って使えないじゃないか!
今回の改正は「改悪」じゃないか!ってなった訳ですね…。
ちなみに、「19年ルール」というのは…
先に退職金を一時金で受け取り、後で確定拠出年金を一時金で受け取る場合、前の受け取りから 20年が空いていればそれぞれの重複期間も含めて退職所得控除を適用できるということです。
「19年ルール」というので「19年空いていれば」かと思うのですが、「20年」です。
なので、人によっては「20年ルール」と言う人もいらっしゃいますが、「19年ルール」というのが一般的
みたいですね…。
こちらは、今回、改正はありませんし、そもそも最初から使えると思っていない人の方が多いようです
ね。
ということで、いよいよ今回のテーマ、この「5年ルール」が「10年ルール」に改正されたことで、どのように受け取るのが良いのかを一緒に考えたいと思います!
ちなみに、「19年ルール」は、そもそも最初から使えると思っていない人の方が多いと申し上げましたが、今回はその「19年ルール」も使うことを含めて考えていきたいと思っています。
10枚目のスライドをご覧ください。
まず、どのように受け取るのが良いのかを考えるうえで、そもそも退職金や確定拠出年金はどのように受け取ることが出来るのか、今更ながらの確認ですが…
退職金や確定拠出年金の受け取り方は、①一時金として受け取る方法、②年金として受け取る方法、③一時金と年金を組み合わせて受け取る方法の3種類があります。
ちなみに、こちらも今更ながらですが、一時金として受け取った場合は、退職所得控除の対象となり、年金として受け取った場合は、公的年金等控除の対象となります。
なので、これらの控除を最大限に活かす方法を、この3種類の受け取り方の組み合わせから考えることになります。
11枚目のスライドをご覧ください。
ということで、こちらも今更ながらですが、このページは、退職所得控除の確認となります。
退職金や確定拠出年金を一時金で受け取る場合は、受け取った金額から退職所得控除額を差し引いた金額の1/2に所得税がかかります。
退職所得控除の計算式は、記載のとおりですが、結構、大きいですよね。
ですので、税金は少なくて済むことになります。
なお、先程もお話ししましたとおり、確定拠出年金を一時金で受け取る場合の「勤続年数」にあたる部分は「加入者期間」となります。
ちなみに、企業型確定拠出年金とiDeCoの両方に加入している場合、加入者期間の長い方に重複していない期間のみを合算します。
その加入者期間とは、掛け金を拠出せず、運用の指図だけを行っていた期間は含まれません。
つまり、65歳までは iDeCoの掛け金を拠出していたのですが、65歳以降は掛金は拠出しない、だけど受け取りはせずに、運用だけ続けてください、という場合は加入者期間は65歳までの期間ということで計算する、ということです。
12枚目のスライドをご覧ください。
退職所得控除を考えるうえで、「みなし勤続年数」という考え方があります。
それは何かと言いますと…
退職一時金が退職所得控除の金額より少ない場合、一時金として受け取る場合の退職所得控除は「みなし勤続年数」で計算されます。
少しスライドの例を見ますと、24歳から60歳まで勤務し、60歳で定年退職、退職金は1,500万円だった場合、勤続年数は36年となり、
退職所得控除額は、800万円+70万円✕(36年20年)=1,920万円ですので退職金 1,500万円の方が退職所得控除の金額より少ないわけですね。
この場合、勤続年数は36年なんですが、「みなし勤続年数」が適用されて、勤続年数を短くみなしてくれるんですね。
「みなし勤続年数」の計算の仕方は、スライドに記載のとおりなんですが、この場合、勤続年数は30年とみなされ、6年間、短縮されることになります。
つまり、この「みなし勤続年数」により、6年間、重複期間は短くみなされますので、次に使える退職所得控除が大きくなることになります。
13枚目のスライドをご覧ください。
こちらのスライドは、今更ながらの公的年金等控除の確認です。
退職金や確定拠出年金を年金で受給する場合、年齢及び年金額に応じた公的年金等控除の額を所得から控除することができます。
具体的な内容は、スライドをご確認ただきたいのですが、1点、この公的年金等控除に関する 2025年度税制改正があります。
それは、今回の話と直接関係はありませんが、2025 年度税制改正により、給与所得控除と公的年金等除の合計額の上限が280万円となることとなりました。
つまり、退職金や確定拠出年金を年金で受け取り、公的年金等控除を受けて、同時に、会社員として給与所得があり、給与所得控除を受けている場合、控除の合計額の上限が280万円であるので、注意が必要となります。
実施時期ですが、これは先ほどの年金改正法案の中の在職老齢年金制度の見直しと連動して、2026年度の税制改正によって法制化される予定です。
切りが良いところで、今回はこれくらいにさせていただき、続きは次回以降で!
引き続き、よろしくお願いいたします!