宿泊税見直し2025 総まとめレポート― 東京観光と制度の未来 ―

Ⅰ. 序章：20年目の宿泊税 ― 「観光都市・東京」の現在地

2002年、東京都は全国に先駆けて宿泊税を導入した。
1人1泊100～200円という小さな税から始まった制度は、
20年を経ていま再び注目を集めている。

インバウンド需要の急回復、外資系高級ホテルの進出、
そして「高級民泊」の急増――。
観光の形が変わる中で、宿泊税もまた「時代に合わせて再設計」されようとしている。

2024年度、東京都内の延べ宿泊者数は1億1,035万人泊。
うち外国人比率51.5%で、初めて過半数を超えた。
宿泊税収は約69億円（2019年度比2.5倍）に達し、観光復興の象徴となった。

しかし同時に、観光振興費は306億円に膨らみ、
税収だけでは到底支えきれない状況だ。

税は増えても、支出はもっと増えている。
宿泊税の見直しは「財源再設計」の議論でもある。

東京23区で1泊3万円以上の民泊は22%（2019年の約4倍）に。
浅草、渋谷、港区などで5万円を超える民泊も増加している。

だが、多くの民泊は宿泊税の課税対象外。
旅館業法上のホテル・旅館のみが対象となる仕組みのため、
1泊10万円の民泊でも非課税という“ねじれ”が生じている。

「同じ宿泊で税負担が違うのは不公平だ」
― ホテル業界関係者

公平性の回復には、民泊課税の明確化とデジタル徴収が欠かせない。

「民泊の監督や苦情対応にコストがかかる。
課税分を地域対応に充てられれば住民の理解が得られる」

「民泊も当然課税対象とすべき。宿泊という行為に線を引くべきではない」

「観光は大切だが、生活環境も守ってほしい」

宿泊税はもはや観光振興税ではなく、「共生のための地域財源」へと役割を変えつつある。

AIとAPIによる自動課税システムが登場。
宿泊予約データをリアルタイムに集計し、徴収を自動化する構想が進む。

さらに、AIが宿泊税収と地域消費データを連動分析することで、
「観光による経済波及効果」が見える化される時代が近づいている。

税を「取る」から「活かす」へ。
デジタル化はその転換点にある。

観光政策のAI活用が進むほど問われるのが倫理・透明性・説明責任。

「AIの結論を人間が理解し、検証できること」
― それが観光政策の信頼を守る唯一の条件だ。

都や観光庁では「観光AIガイドライン」や「AI倫理憲章」策定の検討も始まっている。
観光税をめぐる意思決定も、人とAIが協働する新しい段階へと進む。

「マナー啓発や混雑緩和、ゴミ対策。
こうした課題は自治体が最前線で担っている。
宿泊税は、その取り組みを支える“共生の財源”であってほしい」
― 台東区・服部征夫区長

観光と地域生活の調和を実現するには、
「どこに税をかけるか」よりも「どう使うか」が重要。
宿泊税の見直しは、暮らしと観光をつなぐ財政哲学の転換点でもある。

東京の宿泊税は、いま再び「観光の羅針盤」として問われている。

税とは、観光の価値を共有するためのルール。
ルールを変えることは、都市の未来を描き直すことだ。

宿泊税見直し2025は、その第一歩である。

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。