インフレ時代の家計防衛 ― 現金主義から“資産分散主義”へ

FP

「貯金=安全」という常識が変わる時代

かつて日本では、「貯金は安心」というのが常識でした。
しかし2025年のいま、状況は大きく変わっています。

  • 円安:1ドル=150円を超える水準が定着
  • 物価:食料・光熱費・保険料までじわじわ上昇
  • 金利:依然として低金利で、預金の利息はほぼゼロ

つまり、現金の価値が目減りする時代に入っているのです。

「お金を貯めても安心できない」
――そんなインフレ時代に、家計を守るキーワードが
“資産分散主義”です。


1. インフレが家計に与える本当のリスク

● 見えない“実質目減り”

インフレ率が2%続けば、
10年で現金の購買力は約18%も失われます。

たとえば100万円を銀行に預けていても、
10年後には実質82万円分の価値しかなくなる計算です。

● 現金の「安心」は“変動に耐えられない不安”

  • 物価が上がっても現金は増えない
  • 金利が上がると国債や株式に資金が流れる
  • 老後資金の実質価値が下がる

つまり、“動かさないお金”こそが最大のリスクになり得ます。


2. 現金主義から「資産分散主義」へ

資産分散主義とは、
お金を「形」と「通貨」で分けて持つことです。

● 資産の「形」を分ける(資産クラス分散)

種類特徴リスク対応
現金・預金安定・流動性高い生活防衛資金に限定
株式・投信インフレに強い長期保有・NISA活用
債券価格変動少・分配安定株の調整時のクッション
金(ゴールド)通貨価値下落時に強いインフレヘッジ
不動産・REIT収益+インフレ対応流動性リスクに注意

● 資産の「通貨」を分ける(為替分散)

通貨特徴
安心だがインフレに弱い
ドル世界基軸通貨、外貨資産の中心
ユーロ・豪ドルなどドル依存を避ける補完的通貨

日本円だけでなく、
ドル建て・外貨建て資産を一部保有することで、
円安や物価上昇に備えられます。


3. 家計の「資産配分」モデル

FPの世界では、家計防衛のための資産配分を
次のように考えます。

資産カテゴリ比率の目安主な手段
現金・預金30%普通預金・定期預金(生活費半年分)
株式・投資信託40%NISA・インデックス投信
債券・バランス型15%外債ETF・国内公社債ファンド
金・コモディティ10%金ETF・純金積立
外貨預金・外貨MMF5%米ドル・豪ドルなど

このように資産を分けることで、
どの経済局面でも「どれかが支える」構造をつくることができます。


4. 現金の“居場所”を決める

現金を減らすのではなく、役割を明確にすることが大切です。

目的保有期間使い道
生活防衛資金6〜12ヶ月分突発支出や収入減への備え
近い将来の支出1〜3年以内家電・教育・旅行など
投資用余剰資金長期(5年以上)NISA・積立投資などに回す

「なんとなく銀行に置いておく」から、
使う目的ごとに置き場所を決める」へ。
それが資産防衛の第一歩です。


5. “守る”ために、少し“動かす”

資産分散とは、派手な投資ではありません。
むしろ、家計を守るための静かなリスク管理です。

  • 少しずつ積み立てる
  • 定期的に資産配分を見直す
  • 景気変動に一喜一憂しない

これを習慣化することで、
「変動に強い家計」が育っていきます。


まとめ ― “安定”とは、動かすことを恐れないこと

現金だけに頼る時代は終わりました。
いま求められるのは、リスクを避けることではなく、コントロールすること。

  • 現金は必要な分だけ
  • 株・債券・金・外貨でバランスを取る
  • 目的ごとにお金の“居場所”を決める

こうして家計を「静かなポートフォリオ」に変えることが、
インフレ時代を生き抜く最強の防衛策です。


出典:2025年10月22日 日本経済新聞朝刊
「新政権発足、市場の見方 経済政策実現で株価に上値余地」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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