新政権が描く「責任ある積極財政」――高市政権と維新が目指す日本経済の再構築

政策

1.「責任ある積極財政」とは何か

高市早苗首相が打ち出したキーワードは「責任ある積極財政」。
財政の持続可能性に配慮しつつも、景気下支えや国民生活の安定を重視する――いわば「選択的な財政拡張」です。

政府は経済対策の策定を指示し、ガソリン減税、電気・ガス料金の補助、介護・医療現場への前倒し支援など、家計と社会インフラを直接支える政策を急ピッチで進めます。


2.「維新」との協調――減税と教育無償化へ

連立パートナーの日本維新の会は、ガソリン減税や高校無償化に前向きな姿勢を見せています。
ガソリン税の旧暫定税率(いわゆる“上乗せ分”)の廃止は年内成立を目指し、恒久的な税負担軽減が焦点になります。

高校授業料の無償化については、10月中に制度設計を確定させる見通し。全世帯対象ながら、外国人学校をどう扱うかなど、線引きの議論も続きます。


3.財源の確保が最大の課題

1.5兆円規模に及ぶ税収減をどう埋めるか。
政府は、政策効果の薄い「租税特別措置(租特)」を見直し、廃止分を財源に充てる方針を検討しています。

しかし、歳出拡大に比べて財源の裏付けが乏しければ、長期金利の上昇や円安リスクを招く恐れもあります。
市場の信認を保てるかどうか――この点が、高市政権の試金石となりそうです。


4.社会保障改革の“温度差”

維新は「給付付き税額控除」の早期導入や、社会保険料負担の軽減を重視します。
他方で、高額療養費制度の見直しには慎重。
政府が2025年8月からの引き上げを決めていた負担増計画は、石破前政権で見送られました。

高市政権でも再検討は避けられませんが、患者団体への配慮や医療現場への理解なしには進みにくい分野です。
維新は医療費の抑制を「薬価見直しや病床削減」で進めるべきだと主張しており、両者の調整は今後の焦点になります。


5.コメ増産政策と都市部との視点の違い

石破政権で議論となった「コメの増産」も、維新との間で温度差があります。
維新は農地の大規模化と一時的な関税引き下げで生産を1.5倍に増やす案を支持。
一方で高市首相は「精緻な需要予測に基づく生産」を重視し、価格下落を懸念する農家への配慮をにじませています。

都市と地方、農家と消費者――政策のバランスをどう取るかも政権の手腕が問われる点です。


6.「積極財政」の先にあるもの

高市政権が目指すのは、分配と成長の両立です。
短期的には減税・補助金で生活を支え、中長期的には教育や医療、エネルギーなどの「社会インフラ投資」で成長基盤を築く。

ただし、財政拡張には必ず副作用が伴います。
国債増発による市場不安、円安進行による生活コスト増――そのリスクをどう抑えるかが、真の「責任ある積極財政」の成否を分けます。


7.まとめ:拡張と抑制のはざまで

高市政権の挑戦は、単なるバラマキでも緊縮でもない「中間の道」を探る試みです。
維新との協調が続けば、政策のスピード感は増すでしょう。
しかし、財源の裏付けを欠けば一気に市場の信認を失うリスクも。

「選択と集中」「支出と責任」――この両輪のバランスをどう取るか。
それが、日本経済再生の鍵を握ります。


出典:2025年10月22日 日本経済新聞朝刊「新政権、探る財政拡張 ガソリン減税年内に」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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