第4回 “壁”を越えたらどうなる? 年収アップ後の手取りシミュレーション

FP
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💬 「壁を越えると損をする」は本当?

「103万円を超えると損する」
「130万円を超えたら手取りが減る」

――こうした“年収の壁”の話を耳にしたことがある人は多いでしょう。
でも実際のところ、壁を越えたからといって必ず手取りが減るわけではありません

むしろ、制度の仕組みを理解して働けば、
年収アップ=手取り増につなげることも可能です。


📊 図表:主な壁を越えたときの手取りの目安(2025年版)

年収所得税住民税社会保険料手取りの目安(概算)備考
100万円0円0円0円約100万円非課税・扶養内
110万円0円数千円0円約109万円住民税課税開始(非課税世帯ライン)
123万円0円数千円0円約121万円配偶者控除の上限付近
160万円数千円約3万円0円約155万円所得税発生(本人課税ライン)
170万円約1万円約4万円0円約165万円配偶者特別控除の範囲内
180万円約2万円約5万円約15万円約158万円社会保険加入(106万円・130万円壁通過後)
200万円約3万円約7万円約18万円約172万円扶養外・社会保険完全加入

(注)概算:給与所得者・扶養家族なし、標準的な住民税率10%・社会保険料率15%で試算。


🧩 「壁」を越えるときの3つの変化ポイント

① 税金(所得税・住民税)

  • 所得税は160万円超から発生しますが、税率は5%程度。
  • 住民税は110万円超で課税開始。
    → どちらも「急激に手取りが減る」ほどのインパクトではありません。

② 社会保険

  • 年収106万円(大企業)または130万円(中小)を超えると、
     健康保険・厚生年金への加入が必要。
  • ただし、将来の年金受給額が増えるメリットもあり、
     長期的には“損”ではなく“貯蓄の一部先取り”のような性格です。

③ 扶養控除・配偶者控除

  • 扶養される側が働きすぎると、世帯主(夫など)の控除が減少します。
  • とはいえ、160万円以内なら配偶者特別控除の満額38万円が使えます。
    → 夫婦トータルで見れば、実はそれほど手取り差は生じません。

💡 ケーススタディ:「妻がパートで働く」場合

ケースA:年収130万円で扶養内

  • 夫の控除:配偶者特別控除あり
  • 妻の社会保険:扶養のまま(自己負担なし)
  • 手取り:130万円(税・社会保険ほぼゼロ)

ケースB:年収180万円で社会保険加入

  • 夫の控除:配偶者特別控除の一部適用
  • 妻の社会保険:自分で負担(約15万円)
  • 手取り:158万円(加入による減少あり)

💬一見「130万円より手取りが減った」と感じますが、
 将来の年金増や医療保険の保障を考えると、トータルでマイナスではありません


📈 “損をしない働き方”のポイント

  1. 勤務先の規模を確認する
     → 106万円の壁があるのか、130万円なのかを把握。
  2. 一時的な収入増は「事業主証明書」で対応
     → 扶養の継続を申請できる特例あり。
  3. 160万円以内なら税負担は軽微
     → 税金よりも「社会保険加入ライン」を重視するのが実務的。
  4. 将来の年金・医療保障も踏まえた選択を
     → 短期の手取りだけで判断しない。

🧭 まとめ:「“壁”を怖がらず、制度を味方に」

「年収の壁」という言葉が一人歩きしていますが、
本来の目的は、公平で持続可能な働き方を支える仕組みをつくることにあります。

壁を意識するよりも、

  • 自分や家族の働き方
  • 将来の生活設計
  • 税・社会保険・扶養のバランス

を総合的に見て判断することが大切です。


🗒️ 出典:企業実務2025年7月号 特別記事
「徹底解説!『新・年収の壁』を攻略する」澁谷典彦税理士事務所 澁谷典彦 氏


🧾 シリーズまとめ

タイトル主なテーマ
第1回103万円→160万円に!新・年収の壁の全体像所得税・基礎控除改正
第2回配偶者控除・扶養控除・特定親族特別控除をわかりやすく家族の控除の新基準
第3回住民税と社会保険の壁 ― 実務で気をつけたいポイント110万・106万・130万円ライン
第4回“壁”を越えたらどうなる?年収アップ後の手取りシミュレーション実践的働き方戦略

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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