【補足シリーズ第2回】「住宅ローン控除・ふるさと納税・医療費控除・iDeCo」― 年末調整でできること・できないことを整理しよう

税理士
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年末調整の時期になると、「この控除は会社に出せばいいの?」「確定申告も必要?」と迷う声をよく耳にします。
2025年は控除制度の見直しが多く、特に住宅ローン控除・ふるさと納税・医療費控除・iDeCo(個人型確定拠出年金)を正しく理解しておくことが重要です。

この記事では、「年末調整でできる控除」と「確定申告が必要な控除」をわかりやすく整理します。


🏠 1. 住宅ローン控除 ― 1年目は確定申告が必要!

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、マイホームを購入した人が年末時点のローン残高に応じて税金が戻る制度です。
ただし、初年度(住宅を取得した年)は注意が必要です。

  • 初年度のみ確定申告が必要
    → 税務署で申告し、翌年以降は会社の年末調整で控除可能になります。
  • 2年目以降は、金融機関から届く「年末残高証明書」を添付すればOK。
  • 途中で借り換えをした場合は、「残高証明書」の発行元が変わるため要確認です。

💬 ポイント:住宅ローン控除は“10年以上の返済期間”がある住宅が原則対象。
住宅ローンの繰上返済などをした場合も、年末時点の残高で計算されます。


🎁 2. ふるさと納税 ― ワンストップ特例を使えば確定申告不要

ふるさと納税は、自治体への寄附を通じて税金の一部を控除できる制度です。
手続きには2つの方法があります。

方法対象者手続き
確定申告自営業・6団体以上に寄附した人寄附先から届く受領証明書を添付して申告
ワンストップ特例給与所得者(会社員)で5団体以内の寄附寄附ごとに「特例申請書」を提出するだけで完了

つまり、会社員で5自治体以内なら、年末調整や確定申告は不要です。
ただし、転職や引越で住所が変わった場合は、特例が無効になることがあるため注意しましょう。

💬 ポイント:ワンストップ特例を使うときは、申請期限(翌年1月10日)を過ぎないように!


🏥 3. 医療費控除 ― 年末調整では処理できない代表例

医療費控除は、1年間に支払った医療費が10万円(所得200万円未満の人は所得の5%)を超えた分を所得から差し引ける制度です。

ここが重要な点です:

医療費控除は年末調整では対応できず、必ず確定申告が必要です。

対象となるのは、本人や生計を一にする家族が支払った医療費。
通院・入院費のほか、出産費用や介護保険の自己負担分、ドラッグストアのセルフメディケーション税制対象医薬品なども含まれます。

💡 医療費控除の準備ポイント

  • 領収書は提出不要ですが、「医療費控除の明細書」の作成が必要。
  • 医療費通知(健保組合の「医療費のお知らせ」)を使えば記入を簡略化できます。
  • 家族分をまとめて1人が申告してOK。

💬 ポイント:年末調整では「医療費控除の余地あり」を意識しておく。
翌年2〜3月の確定申告でしっかり反映しましょう。


💰 4. iDeCo(個人型確定拠出年金) ― 書類提出を忘れると控除が消える!

iDeCoは、老後資金を自分で積み立てるための制度ですが、
年末調整の対象でもある「小規模企業共済等掛金控除」に分類されます。

🔹 控除の仕組み

  • iDeCoの掛金は全額が所得控除になります。
  • つまり、年収500万円の会社員が月2万円積み立てていれば、年間24万円が課税所得から差し引かれます。
  • 実質的な節税額は年間約4〜6万円にもなるケースがあります。

🔹 提出書類とスケジュール

  • 国民年金基金連合会から届く
    「小規模企業共済等掛金払込証明書」を会社に提出。
  • 毎年10月下旬〜11月上旬に発送されます。
  • 提出が遅れた場合は、確定申告で控除を受けることも可能です。

💬 注意点:

  • 証明書を紛失した場合は再発行可能(ネット申請も可)
  • 掛金を停止・変更した場合でも、支払った月分だけ控除対象になります。
  • 書類を出し忘れると節税効果がゼロになるので要注意!

📊 5. 年末調整と確定申告の使い分けを整理

控除の種類年末調整でOK確定申告が必要
基礎控除・扶養控除・配偶者控除不要
生命保険料・地震保険料控除不要
住宅ローン控除(2年目以降)不要
住宅ローン控除(初年度)×必要
医療費控除×必要
ふるさと納税(ワンストップ特例なし)×必要
iDeCo(小規模企業共済等掛金控除)不要(証明書要)

💬 ポイント:
年末調整は「会社経由でできる控除」だけを扱う仕組み。
それ以外の控除は、自分で確定申告して初めて反映されます。


✏️ まとめ ― “出すだけ控除”から“考える控除”へ

2025年の年末調整は、控除の種類が増えた分だけ、
「どこまで会社に任せて、どこから自分でやるか」を見極めることが大切です。

住宅・医療・年金・寄附など、控除は家計とライフイベントの鏡です。
出すだけでなく、「なぜこの控除があるのか」「自分にどんな効果があるのか」を理解することで、
年末調整は“義務”から“家計戦略”に変わります。


出典:『企業実務』2025年8月号
「年末調整に向けた『基礎控除の見直し等』『特定親族特別控除』の準備実務」および
国税庁「令和7年版 年末調整のしかた」「所得税の控除制度のあらまし」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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