第2回 ピケティの“r>g”をやさしく読む ― 資本で差がつく理由

FP
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■ 「働いても豊かになりにくい」時代?

「昔より頑張って働いているのに、生活はそんなに楽にならない」
「物価は上がっているのに、給料の伸びが追いつかない」

そんな実感を持つ人は多いでしょう。
でも、いま世界中の経済学者が同じことを指摘しています。
――“労働”より“資本”のほうが早く増える時代に入っているのです。


■ ピケティの発見「r>g」とは?

フランスの経済学者トマ・ピケティが著書『21世紀の資本』で示した有名な式があります。

r > g

これが、世界の格差を説明する「魔法のような公式」です。

  • r … 資本収益率(株式・不動産・配当などのリターン)
  • g … 経済成長率(賃金やGDPの伸び)

ピケティの分析によると――
18世紀から現代にいたるまで、平均的なr(資本の利益率)は年5%前後
一方、g(経済成長率)は年1〜2%程度にとどまります。

つまり、

「お金を働かせる人」の資産は、「自分が働く人」の収入より早く増える。

これが、現代社会の“構造的な格差”の根っこです。


■ 日本でも起きている「r>g」の現象

ここ10年の日本を見てみましょう。

指標2013年→2023年増加率
日経平均株価約14,000円 → 約33,000円約2.3倍
給与・賞与総額(法人企業統計)約200兆円 → 約240兆円約1.2倍

つまり、株式など「資本」のリターンが、
給与など「労働」よりもはるかに速いペースで増えているのです。

ピケティの法則は、遠い世界の話ではありません。
いまの日本経済そのものが、r>gの現実を示しています。


■ では、どうすれば“r”の側に立てるのか?

答えはシンプルです。
自分も「資本を持つ側」に一歩踏み出すこと。

それは決して大金がなくても始められます。

  • 給与天引きの自社株持株会でコツコツ積み立てる
  • 新NISAで投資信託やETFを買う
  • iDeCoで老後資産を自分で運用する

少しずつでも「資本に働いてもらう」仕組みをつくることが、
これからの時代の“生活防衛”になるのです。


■ 「労働」×「資本」の二刀流時代へ

もちろん、「働くこと」そのものがなくなるわけではありません。
むしろ、働いて得た収入を「資本に変える」意識が大切になります。

給与で生活を支え、
株式や投資信託で未来を育てる。

いわば、“労働と資本の二刀流”。
この考え方が、これからの世代のスタンダードになっていくでしょう。


■ まとめ:働く人こそ、資本の力を味方に

ピケティの公式「r>g」は、格差を批判するためだけの理論ではありません。
むしろ私たちにこう問いかけています。

「あなたも“r”の側に立てるよう、今から準備していますか?」

会社の持株会、新NISA、iDeCo――。
どんな方法でも構いません。
“資本の力”を味方につける意識が、
これからの人生を豊かにする第一歩になるのです。


■ 次回予告

次回は第3回
「会社から株でもらう報酬 ― ストック報酬・持株会のしくみ」

実際にどういう制度があるのか?
給与天引きの持株会、信託型株式報酬、ストックオプションなど、
一般社員にも関係する“株でもらう仕組み”をわかりやすく紹介します。


📚 出典
2025年10月19日 日本経済新聞朝刊
「資本騒乱 さらば運用貧国(5)株式報酬、従業員を資本家に」
およびトマ・ピケティ著『21世紀の資本』(みすず書房)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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