2025年の年末調整――
例年以上に“慎重さ”が求められそうです。
なぜなら、新設された「特定親族特別控除」がスタートするからです。
この制度は、大学生年代(19歳以上23歳未満)の子どもを持つ家庭にとって大きな節税チャンスになる一方、子どもの収入額の把握を誤ると控除額が変わってしまうという、非常にデリケートな制度です。
💡特定親族特別控除とは?
2025年から始まったこの新制度は、次のような仕組みです。
| 子の年収(給与収入のみの場合) | 親の控除額 |
|---|---|
| 150万円以下 | 63万円 |
| 150万円超~188万円以下 | 段階的に減額(最大63万円→0円) |
| 188万円超 | 対象外 |
つまり、これまで「扶養控除の対象外(年収103万円超)」だった大学生でも、年収188万円までなら一定の控除を受けられるという点がポイントです。
税理士の福田浩彦氏も「昨年まで対象外だった世帯でも、今年は恩恵を受ける可能性がある」と指摘しています。
📉なぜミスが多発しそうなのか?
この控除の難しさは、「子の所得額」で控除額が変動する点にあります。
たとえば──
- 年末調整で「子の年収を149万円くらい」と申告
- 実際には年末のアルバイト繁忙期で「156万円」に増加
この場合、控除額は 63万円 → 51万円 に減額されます。
つまり、わずか数万円の違いで税額が変わってしまうのです。
🏢会社も混乱中?freeeなどがセミナーで注意喚起
クラウド会計・給与計算ソフトを提供するfreee(フリー)では、10月上旬に企業担当者向けセミナーを開催。
多くの人事・総務担当者が集まり、税理士の説明に熱心に耳を傾けていたそうです。
ある総務部長(49歳)は「大学生の子どもがいる社員には、夏の時点で早めに注意喚起した」と語っています。
それほど現場でも、申告ミスを懸念する声が強まっています。
🧾間違った場合どうなる?
もし実際より大きな控除を申告してしまった場合──
翌年以降、税務署から「扶養控除等の見直し」通知が会社に届きます。
会社は社員に再確認を求め、修正のうえ再年末調整を実施。
不足分の税金が、翌年の給与から天引きされるのが一般的です。
ただし、税務署は個人情報保護の観点から「子の所得額」を会社に伝えることはありません。
つまり、親自身が子の収入を正確に把握していないと修正ができないのです。
👨👩👧ミスを防ぐには?
税理士の辻喜子氏は、こうアドバイスします。
「子の給与明細を見せてもらったり、11~12月の勤務予定表を確認したりして、年間収入をしっかり見積もることが大切です。」
さらに年明けには、子どもの勤務先から発行される
「給与所得の源泉徴収票」を確認することで、最終的な金額を正確に把握できます。
🔁修正できるタイミング
- 会社での修正:翌年1月末まで受け付けてくれる場合が多い
- 間に合わなかった場合:翌年2〜3月に自分で確定申告すればOK
焦らず、正確な情報をもとに手続きを進めましょう。
🎯まとめ:親子の「年末調整コミュニケーション」が鍵
新制度の要は「子の所得の正確な把握」です。
子どもがアルバイトやインターンを掛け持ちしている場合、年収が想定より増えることも珍しくありません。
つまり、
節税の第一歩は“親子の情報共有”。
年末調整をきっかけに、
お金・税金・働き方について親子で話し合う良い機会にしてみてはいかがでしょうか。
📚参考資料
出典:2025年10月18日 日本経済新聞朝刊「<ステップアップ>大学生の親、所得控除に注意」
取材協力:税理士 福田浩彦氏、柴原一氏、辻喜子氏
参考:国税庁「年末調整がよくわかるページ(令和7年版)」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
