高市新政権、連立協議の難航が映す「政治の構造変化」― 経済対策と外交の両立は可能か?

政策

自民党の高市早苗総裁が政権発足に向けた連立協議を続けています。
ところが、公明党との合意が異例の持ち越しとなり、首相指名は10月20日以降にずれ込む見通しです。物価高対策を含めた補正予算の成立が年内に間に合わない可能性も出てきました。


■ 「自公」の歯車が狂い始めた背景

自民党の新執行部は、麻生派の影響力が強く、幹事長代行には政治資金問題で注目を集めた萩生田光一氏が就任しました。
これに対し、公明党の斉藤鉄夫代表は「政治とカネ」の問題へのけじめを強く要求。旧安倍派出身者の登用に慎重論を示しています。

麻生太郎副総裁は創価学会との距離を置く姿勢を崩しておらず、関係修復は容易ではありません。高市氏が国民民主党の玉木雄一郎代表と非公式に接触したことも、公明党内に不信を生む要因となりました。

この構図は、「自公体制」という戦後長らく続いた日本政治の軸に、変化の兆しが生まれていることを示しています。


■ 経済対策が「政治日程」に押し流される懸念

高市氏は総裁選で「物価高への即応」を訴えてきました。
ガソリン税・軽油引取税の旧暫定税率の廃止を掲げ、自治体向けの重点支援交付金の拡充も打ち出しています。

しかし、組閣が遅れれば、経済対策の閣議決定も補正予算編成も後ろ倒しになります。通常、補正予算の策定には1カ月半から2カ月を要します。
10月下旬発足では、年内成立は極めて厳しいスケジュールです。

岸田政権や石破政権のように「就任直後に経済対策を指示→年末成立」という流れを踏襲できなければ、年内はわずか3000億円弱の予備費でしのぐしかない。物価高に苦しむ現場の支援は、またも「政治の都合」に翻弄されかねません。


■ 「年収の壁」178万円論争と財源のリアリズム

高市氏が接近する国民民主党が重視するのは、「年収の壁」を103万円や130万円から178万円に引き上げる案です。
恒久的な所得税減税に近い効果を持つため、財源の裏付けが大きな論点になります。

24年末の与党協議では、財源難から25年度は7000億円規模の減税にとどめました。高市氏が掲げる「責任ある積極財政」を実現するには、赤字国債発行の容認と財政規律維持のバランスが問われます。

「増税なき減税」は耳障りは良いものの、持続可能性を欠けば信用を失います。政治的アピールと財政現実の狭間で、舵取りの難しさが浮き彫りです。


■ 外交デビューも時間との戦い

ASEAN首脳会議(マレーシア)、トランプ米大統領の来日、APEC首脳会議(韓国)――。
高市氏の外交デビューは、わずか就任直後から続く超過密日程です。

外相・防衛相経験がない中で、中国や韓国との首脳会談をどう演出できるか。
これまでの発言の「強硬イメージ」を、いかに現実的な外交へと調整できるかが、国際社会の注目点です。


■ 政治の“時間軸”を取り戻せるか

過去の政権を見ると、発足から半年で支持率50%を維持できた内閣は長期化しています(小泉、安倍、岸田政権など)。
逆に、発足直後に混乱すれば、1~2年で終わるケースが多い。

高市政権の第一歩は、経済対策の遅れをどう挽回し、連立協議をどう着地させるかにかかっています。
政策の中身だけでなく、「実行のスピード感」が問われているのです。


■ FP・税理士の視点から見た「財政再設計」の転換点

家計にたとえれば、国の財政も「収入(税収)」と「支出(予算)」のバランスで成り立ちます。
今の日本は、社会保障費や防衛費の増加が固定費化しており、可処分部分はほとんどありません。

企業なら、これを「構造的な赤字体質」と呼びます。
一時的な赤字国債での景気対策は理解できますが、将来の増税や社会保険料負担の形で必ずツケが回る。
この現実を前提に、「責任ある積極財政」をどう定義するのか――。
税制・社会保障制度の両面から見直しを迫られる時期に差し掛かっています。


出典

出典:2025年10月9日 日本経済新聞朝刊
「高市体制、経済対策に遅れ 連立協議難航で首相指名20日以降」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO91829370Z01C25A0EA2000/?n_cid=dsapp_share_ios)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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