東京都内では、70㎡前後のファミリータイプでも1億円を超えるマンションが珍しくなくなっています。
共働き世帯でも「とても手が出ない」と感じる人は多く、住宅ローンの組み方にも変化が見られます。
その代表例が夫婦で借りる「ペアローン」です。
ペアローンとは
ペアローンとは、夫婦それぞれが同じ物件に対して別々に住宅ローンを組む方法です。
2人がそれぞれ主債務者となり、借入契約も2本。
物件の所有権も、資金負担割合に応じた共有名義になります。
一般に住宅ローンは年収の7倍程度までが借入上限の目安とされています。
そのため、夫婦で借りることで単独よりも多くの資金を調達でき、都心部の高額物件にも手が届きやすくなります。
住宅ローン比較サービス「モゲチェック」を運営するMFSの分析によれば、
ペアローンや連帯債務で住宅ローンを借りる人の割合は、
2022年4月の約20%から2025年9月には約35%へと大きく増加しています。
共働き世帯の増加とともに、ペアローンが一般化していることが分かります。
もう一つの選択肢「連帯債務(収入合算)」
夫婦で住宅を購入する際には、ペアローン以外に収入合算による連帯債務という方法もあります。
これは1本のローンに2人の収入を合算して借りるもので、主債務者と連帯債務者に分かれます。
以下の表で整理してみましょう。
| 比較項目 | ペアローン | 連帯債務(収入合算) |
|---|---|---|
| ローン本数 | 2本(夫婦それぞれ) | 1本(共有) |
| 手数料・登記費用 | 2本分必要 | 1本分で済む |
| 団体信用生命保険 | 各自加入可能 | 主債務者のみが原則加入 |
| 住宅ローン控除 | 各自に適用可 | 各自に適用可(共有持分ありの場合) |
どちらを選ぶかは、夫婦の収入バランスや希望する借入額によって変わります。
収入差が大きい場合は連帯債務、借入額を最大化したい場合はペアローンが選ばれやすい傾向です。
ペアローンのメリット
- 借入額を増やせる
夫婦の収入をそれぞれ評価してもらえるため、より高額な物件を購入できる可能性があります。 - 住宅ローン控除が2人分適用される
年末のローン残高の0.7%を最長13年間、所得税などから差し引けます。
夫婦がそれぞれローン契約者になるため、控除を2人分受けられるのは大きな利点です。 - 団体信用生命保険をそれぞれ契約できる
万が一の際、各自のローンが完済されるため、遺された家族の負担が軽減されます。 - 金利タイプや借入期間を分けられる
例えば、夫が35年固定、妻が20年変動というように、ライフプランに応じた組み合わせも可能です。
ペアローンの注意点・リスク
① 返済責任は“2人分”
ペアローンでは、お互いが相手の連帯保証人になるケースが多いです。
そのため、一方が返済不能になった場合、もう一方が相手のローンも返済しなければならない可能性があります。
形式上は「2本のローン」ですが、実質的には「2人で1つの責任」を負う仕組みです。
② 離婚時の処理が難しい
離婚をしてもローン契約は残ります。
片方が家を引き取る場合、ローンも単独の債務に切り替える必要がありますが、
もともと夫婦の収入を前提に借りているため、銀行が認めないことが多いのが現実です。
その結果、物件を売却してローンを完済するケースもありますが、
売却額がローン残高を下回れば、残債の返済が続くというリスクがあります。
③ 手数料・登記費用は倍
契約が2本になる分、保証料・登記費用・手数料がそれぞれ発生します。
トータルで数十万円単位の差が生じる場合もあるため、事前の資金計画が重要です。
まとめ:ペアローンは「家計一体型」のローン
ペアローンは、共働き世帯にとって都心の住宅を手に入れる有力な手段です。
しかしその裏には、「相手の債務も自分の責任」というリスクも存在します。
契約前には、返済計画のバランスや将来のライフプラン(出産・転職・転勤など)をよく話し合い、
長期的に無理のない範囲で組むことが大切です。
📘 参考出典
〈マネー相談 黄金堂パーラー〉夫婦で借りる住宅ペアローン(上)仕組みを知る
出典:2025年10月8日 日本経済新聞 夕刊
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO91808290Y5A001C2EAC000/
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

