個人・企業・国家の“ウェルビーイング会計”― 「もうけ」から「いきがい」へ。幸福を決算する社会が始まる

政策
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■“利益至上”の時代が終わる

20世紀の経済は「成長」「利益」「効率」を最優先にしてきました。
しかし、21世紀の社会が直面しているのは、
環境問題・人口減少・格差・孤立といった「量では測れない課題」です。

GDPが増えても、幸福は増えない。
企業の利益が拡大しても、社員の満足度が下がることもある。

「どれだけ儲かったか」ではなく、
「どれだけ幸せを生み出したか」が問われる時代へ。

それを可視化するのが、ウェルビーイング会計(Well-being Accounting)です。


■ウェルビーイング会計とは何か

ウェルビーイング会計とは、
従来の財務会計に“人の幸福・社会的価値・環境負荷”などを加え、
「持続的な幸せの総量」を測る新しい会計手法です。

観点従来の会計ウェルビーイング会計
目的利益最大化幸福・持続性の最大化
評価軸売上・利益・株主価値健康・教育・人間関係・地域貢献
ステークホルダー株主・顧客中心社員・地域・環境を含む全関係者
時間軸四半期・年度世代を超えた長期的価値

つまり、「経済の決算」から「人生と社会の決算」へ。
お金の流れだけでなく、幸福の流れも可視化するのが特徴です。


■個人のウェルビーイング会計:人生の“幸福決算書”

個人版ウェルビーイング会計とは、
自分の1年を「どれだけ稼いだか」ではなく、

「どれだけ充実して過ごせたか」で評価する考え方です。

🔹 幸福のバランスシート例

資産(得たもの)負債(失ったもの)
家族や仲間との絆無理な残業・過労
新しいスキルや経験ストレス・健康の悪化
自由な時間経済的不安
社会への貢献孤立感

このように“幸福の決算”を可視化することで、
お金では見えない「自分の豊かさの構造」が見えてきます。

FPや税理士としても、
老後資金や副業収入の相談に加えて、
「幸福のバランスを整える人生設計」を支援する時代が到来しています。


■企業のウェルビーイング会計:利益+幸福の二重決算

企業でも、ウェルビーイング経営の導入が進んでいます。

  • 伊藤忠商事:残業削減と年収上昇を両立し「社員幸福度」を数値化
  • リクルートHD:従業員の心理的安全性と創造性を指標化
  • 花王:社員の健康投資を「人的資本会計」として開示
  • コマツ:社会価値を金額換算する「インパクト加重会計」を採用

これらはすべて、

「社会的価値=経済価値」と捉える経営へのシフト。

投資家も今や「ESG(環境・社会・ガバナンス)」だけでなく、
「W(ウェルビーイング)」を重視する時代に入っています。

🔹 幸福経営のKPI例

分野指標測定方法
健康健康投資額・休職率社員調査・医療データ
成長スキル向上率eラーニング受講数など
関係性社員間信頼指数エンゲージメント調査
社会性地域貢献度NPO連携・寄付額

企業の会計に“幸福KPI”を導入することで、
社員も顧客も「この会社と関わることが幸福」と感じる社会的資産を形成できるのです。


■国家のウェルビーイング会計:GDPからGNHへ

国のレベルでは、すでに「幸福で測る経済」が動き始めています。

  • ブータン王国:国民総幸福量(GNH)を国家指標に採用
  • ニュージーランド:国家予算に「ウェルビーイング枠」を導入
  • 英国:内閣府が「国民幸福白書」を発行
  • 日本でも「幸福度指標(Well-being Index)」を内閣府が開発中

日本でも今後、税や予算を「幸福への投資」として評価する制度が広がるでしょう。

「GDPは伸びたが、幸福は減った」では意味がない。

財政・社会保障・教育などすべての政策を、
「幸福をどれだけ増やしたか」で検証する時代が来ています。


■FP・税理士の視点:「お金の会計」と「幸福の会計」をつなぐ

FP・税理士がこれから果たすべき役割は、
お金の数字と幸福の指標を“橋渡しする専門家”になることです。

たとえば――

  • 家計相談では「お金の余裕+心の余裕」の両面設計
  • 企業支援では「利益+社員幸福度」を統合分析
  • 地域再生では「納税と幸福の循環モデル」を構築

「数字の裏に、人生がある」
この視点をもつことで、税理士・FPは“幸福デザイナー”へと進化します。


■まとめ:「幸福を決算する」社会へ

経済の最終目的は、豊かさではなく幸福です。
企業の決算も、家計の収支も、国家の予算も――
すべては「人が幸せに生きるための器」に過ぎません。

利益は手段、幸福は目的。
そして、税は幸福の分配装置である。

ウェルビーイング会計とは、
「お金の世界に“人の温度”を取り戻す試み」。

これからの時代、
数字の報告書よりも、“幸福の決算書”が信頼を生む社会がやってきます。


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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