■「一人で完結する専門家」から、「つながって支える専門家」へ
税理士・行政書士・司法書士・ファイナンシャルプランナー(FP)――。
これまでそれぞれが独立した専門分野を担い、
社会を制度的に支えてきました。
税務・法務・登記・行政手続・ライフプラン。
どの分野も重要ですが、社会課題が複雑化する今、
「一人の専門家で完結できる相談」は、もはや少数です。
相続・事業承継・老後資金・空き家・創業支援・地域再生。
いずれも“複合的な課題”であり、
制度の狭間にこそ、真の支援ニーズがあります。
専門を深めるだけでなく、専門をつなげる。
これが、次の時代に求められる専門職の姿です。
■「縦の専門」から「横の共創」へ
かつて士業の世界では、
「職域を守ること」が信頼の象徴でした。
しかし、今必要なのは“守る”ことより“結ぶ”ことです。
| 旧来の専門職 | 新しい専門職 |
|---|---|
| 自分の領域を守る | 社会の課題を共有する |
| 知識を提供する | 人生を伴走する |
| 独立して解決する | 連携して支える |
| 契約で関わる | 共創でつながる |
知識を提供する専門職から、
人生に寄り添う伴走者へ。
これが、専門職の新しいミッションです。
■連携が生む「新しい支援モデル」
① 相続・事業承継のワンストップ支援
税理士が資産と税務を整理し、
司法書士が登記・遺言などの法的安定を担い、
行政書士が手続全般をサポート。
FPが家族・人生の視点から全体を整理します。
「資産を残す」だけでなく、「想いをつなぐ」支援へ。
② 起業・スタートアップ支援
行政書士が許認可を整え、
司法書士が会社設立登記を行い、
税理士が資金繰りや会計・税制優遇を設計。
FPは経営者の家庭・人生設計の両面を支援します。
「創業」を点ではなく、「経営・人生」を線で支える。
③ 高齢者・空き家・地域課題への総合対応
高齢化・空き家・後見・相続などが交差する現場では、
税・法・行政・生活支援が一体化して求められます。
この4士業+FPが連携することで、
「制度の支援」から「生活の支援」へ。
地域で支え合う社会モデルが動き始めています。
■FPがつなぐ「制度」と「暮らし」
FPは、士業の中でも“生活者の目線”をもつ専門職です。
税理士・行政書士・司法書士が扱う制度を、
個人の人生設計に翻訳し、全体をつなぐハブになります。
「制度の専門家」と「生活の専門家」が
同じ方向を向いたとき、支援は“制度から人生”へと進化する。
■AI時代にこそ、人間同士の「共創知」が必要
AIは確かに多くの事務を代替します。
確定申告、登記書類、行政申請――
技術が進むほど、“自動化できる領域”は広がるでしょう。
それでも、AIが代わりにできないものがあります。
- 人の想いを読み取ること
- 異なる専門間を調整すること
- 「この人にとって最善」を共に考えること
それは、人間の共創知(co-creation intelligence)。
連携する専門職チームは、AI時代における
“人が社会に意味を与える仕組み”なのです。
■専門職は「制度の番人」から「社会の伴走者」へ
税理士・行政書士・司法書士・FP――。
この4つの専門は、いずれも「生活基盤の信頼」を支える存在です。
だからこそ、これからは「個人を守る」だけでなく、
社会そのものを“支え合いの仕組み”として再設計する力が求められます。
- 税理士は「数字」で支える
- 行政書士は「制度」で支える
- 司法書士は「法」で支える
- FPは「人生」で支える
それぞれの専門が重なり合うとき、
そこに“信頼の社会基盤”が生まれる。
■まとめ:「つながる専門性」が社会を変える
これからの時代、専門職は“知識を提供する人”から、“信頼をつなぐ人”へ変わります。
- 専門性を越えて協働する
- 社会課題を共有し合う
- 一人の人生をチームで支える
この連携こそが、
AIや制度の変化を超えて、
人と社会を豊かにしていく新しい専門職像です。
一人では届かない未来も、
つながれば支えられる。
出典:日本経済新聞/金融庁「金融リテラシー白書2025」ほか関連資料をもとに構成
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

