定年後キャリアを“見える化”するマネープラン実践編― 65歳からの収入・支出・税金・保険をどう組み立てるか

副業
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■「働き続ける人」が増える中で問われる“数字のリアリティ”

人生100年時代の65歳は、もはや「老後の入口」ではなく、
“働きながら受け取る”時代のスタートラインです。

  • 公的年金を受け取りながら週3~4日働く
  • フリーランスや顧問契約で続ける
  • 副業で収入をつなぐ

このように「収入の複線化」が進む一方で、
「手取りが思ったより少ない」「社会保険や税金の仕組みが複雑」
という声も多く聞かれます。

そのために必要なのが、キャリアとお金を同時に見える化するマネープランです。


■65歳からのライフシミュレーションをつくる3ステップ

FP実務でも用いられる、マネープラン作成の基本構成は次の3ステップです。

① 収入を3区分で整理する

65歳以降の収入は大きく分けて3本柱です。

区分内容代表例税区分
① 公的年金老齢基礎年金+老齢厚生年金年額150〜220万円雑所得
② 労働収入再雇用・パート・顧問料など月10〜25万円給与・事業所得
③ 運用・副業収入不動産・配当・副業年20〜50万円事業・配当・雑所得

この3つの合計から、手取り(可処分所得)を算出します。
特に、年金+給与の併給時には「在職老齢年金の減額」「住民税の追徴」に注意が必要です。


② 支出を“固定費・変動費・臨時費”に分ける

65歳以降の支出は、支出構造の再設計が重要です。

区分内容年間目安
固定費住居費・保険料・通信費など約150万円
変動費食費・光熱費・交際費など約120万円
臨時費医療・旅行・住宅修繕など年平均50〜80万円

特に、健康保険料・介護保険料・住民税は「所得に連動して上昇」するため、
“使えるお金”と“課税されるお金”の差を把握することが大切です。


③ キャッシュフロー表で「見える化」する

以下のような5年ごとのキャッシュフロー表をつくると、
資産寿命の把握が容易になります。

年齢年金労働収入副業収入支出合計年末貯蓄残高
65歳180万円180万円20万円300万円2000万円
70歳210万円120万円10万円280万円1950万円
75歳220万円60万円0万円270万円1850万円
80歳230万円0万円0万円260万円1700万円

この表をベースに、

  • 「いつ働くのをやめても大丈夫か」
  • 「年金繰下げは有利か」
  • 「投資資金をどのタイミングで取り崩すか」
    といった判断を数値で裏づけできます。

■実例:65歳・再雇用+副業ライターの場合

仮に以下のケースを想定します。

  • 年金月15万円(年180万円)
  • 再雇用給与月12万円(年144万円)
  • 副業収入月3万円(年36万円)
  • 住民税+社会保険料負担率25%

👉 手取り概算
360万円 × 0.75 = 年間270万円(=月22.5万円)

さらに、

  • 年金受給の繰下げ(70歳開始)を選ぶと+月額20〜30%
  • 青色申告で副業経費を控除すれば課税所得を圧縮

といった調整が可能です。
つまり、制度を理解すれば“働きながら損をしない”設計ができるのです。


■見落とされがちなポイント3選

住民税のタイムラグ
再雇用の翌年に前年所得分が課税されるため、初年度に手取りが減る。

年金課税の誤解
公的年金控除はあるが、年金も課税対象。副業と合算して申告が必要。

社会保険料の二重負担
年金から天引き+給与天引きが重なる場合がある。必ず明細で確認。


■「働く・もらう・備える」を同じ表で管理する

定年後のマネープランは、
「収入」「支出」「資産」の3要素を一枚の表でつなぐことがポイントです。
エクセルや家計簿アプリを使えば、
年ごとの資産残高・手取り額・税負担をシミュレーションできます。

FP相談の現場では、次のような図をよく使います。

🔹 縦軸:年齢(65~100歳)
🔹 横軸:可処分所得(働く+年金)と支出の推移
🔹 折れ線:資産残高(寿命資金ライン)

この“ライフキャッシュフロー曲線”を見れば、
「あと何年働けば安心か」「いつ資産が減り始めるか」が直感的にわかります。


■税理士・FPの役割:数字の見える化で「安心して挑戦できる」社会を

出向起業、副業、再雇用、フリーランス――。
どんな働き方を選んでも、最終的に支えるのは“お金の見通し”です。

マネープランを「数字で見える化」できれば、
「あと◯年働こう」「ここからは週3でいい」といった判断ができます。
それが、不安のない挑戦を支える土台になります。

税理士・FPが行うライフプラン設計は、
単なる数字のシミュレーションではなく、

💬「この生き方で大丈夫」と背中を押すための設計図
です。


■まとめ:「65歳からが“自由に設計できる人生”」

定年後のキャリアは、
“収入を減らす”ことではなく、“自由を増やす”こと

働きながらもらい、もらいながら備え、
制度を活かして人生をデザインする――。

65歳からの人生は、
「お金」と「時間」と「やりがい」のバランスを取る時代です。
そしてその第一歩が、自分の数字を見える化することなのです。


出典:2025年9月19日 日本経済新聞 朝刊
「大企業辞めずに『出向起業』、埋もれる技術に光 支援の仕組みは手探り」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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