■「そろそろ定年」ではなく「ここから第二のキャリア」へ
50代になると、社内ではベテランと呼ばれ、役職定年や再雇用の話題が身近になります。
かつてなら「もう一息で定年」と考える時期でしたが、今や人生100年時代の折り返し地点に過ぎません。
企業寿命が短くなる一方で、個人の就業期間は延びています。
つまり、50代以降の働き方をどう設計するかが、これからの人生を左右する“分岐点”になるのです。
■選択肢①:セミリタイアという「ゆるやかな働き方」
セミリタイアとは、完全に仕事をやめるのではなく、働く時間や収入を自分のペースに合わせて調整する生き方です。
たとえば、
- 週3勤務+副業(月収を6割程度に抑える)
- 顧問契約やスポット相談で働く
- 趣味や地域活動と仕事を組み合わせる
など、「稼ぐ」と「休む」の中間を探る働き方が広がっています。
時間的・精神的な余裕を持ちつつ、年金受給までの空白期間を補う現実的な選択肢でもあります。
■選択肢②:再雇用・転職という「リスク低めの延長線」
一方、安定を重視するなら再雇用や転職も有力です。
定年延長により65歳まで働ける企業も増えました。
ただし、
- 年収が大きく減る
- 責任や裁量が小さくなる
- モチベーションが保ちにくい
といった課題もあります。
そのため、再雇用を“つなぎ期間”と位置づけて、次の準備を進める人が増えています。
この時期に副業・資格取得・発信活動を始めておくことで、将来の独立や業務委託へのスムーズな移行が可能になります。
■選択肢③:独立・起業という「自分の名で生きる道」
独立・起業はハードルが高いように見えますが、実は50代からの起業こそ成功率が高いとも言われています。
理由は、
- 長年の業務経験と人脈
- 取引先や顧客の信頼
- 現実的な判断力と資金計画
これらがそろっているためです。
最近は、「出向起業」や「副業起業」といった形で、会社を辞めずに始めることも可能になりました。
つまり、独立はリスクではなく“選択肢のひとつ”になってきたのです。
■人生100年時代の「キャリア三分法」
これからのキャリアは、
- 40代まで:会社員として経験とスキルを積む
- 50~60代:副業・出向・再雇用で柔軟に働く
- 65歳以降:独立・顧問・講師として社会と関わる
という「三分法」で考えると整理しやすくなります。
この考え方は、資産運用でいう「長期・分散・複利」と同じ。
キャリアもまた、時間を味方につけ、分散しながら積み上げるものなのです。
■税理士・FPの立場から見た“50代の分岐点”
50代は、働き方の変化とともに
税金・年金・社会保険の扱いも大きく変わる時期です。
たとえば――
- 再雇用後の給与水準が下がると社会保険料も軽減される
- 副業・講師報酬などは事業所得・雑所得の判断が必要
- 年金の繰下げ・iDeCo・NISAなどの受け取り時期を再設計
こうした制度の“つなぎ目”を丁寧に設計することが、
「働きながら安心して暮らす」ためのカギになります。
つまり、50代こそ「税務×ライフプラン×キャリア」の総点検期です。
このフェーズを戦略的に乗り越えた人ほど、
60代以降の人生の自由度が圧倒的に高くなります。
■まとめ:「キャリアを終わらせない」生き方へ
かつて定年は「ゴール」でした。
しかし今は、定年を“リスタートの合図”と捉える時代です。
50代からのキャリアリデザインとは、
「働き続けるか、辞めるか」ではなく、
「どう働き方を組み合わせるか」を選ぶこと。
- セミリタイアでゆるやかに働く
- 再雇用で安定を得ながら準備する
- 独立・起業で新たな価値を生み出す
どの道を選んでも正解です。大切なのは、“選べる自分”でいること。
そして、その選択を支えるのが、数字に強いFP・税理士の知恵です。
出典:2025年9月19日 日本経済新聞 朝刊
「大企業辞めずに『出向起業』、埋もれる技術に光 支援の仕組みは手探り」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
