「日本の人口は減っている」。ニュースなどでよく耳にする言葉です。実際に日本全体では出生数が減り続け、人口はすでに減少局面に入りました。地方の市町村では人口流出が深刻で、消滅可能性都市という言葉も使われるほどです。
ところが、そんな中で 東京だけは人口が増えている という現実があります。総務省の住民基本台帳に基づく人口動態調査によれば、2024年に東京都の人口は前年から 9万632人増 となりました。
そのうち、実に 81%が外国人による増加 です。つまり「東京の人口増=外国人の流入」と言い換えてもいい状況なのです。
若い世代で広がる外国人比率
特に注目すべきは若い世代の比率です。新宿区や豊島区といった都心部では、20~24歳人口に占める外国人の割合が 4割弱 にも達します。
大学や専門学校に通う留学生、アルバイトや就職で東京に来る若者が大幅に増えており、都心の街の雰囲気を変えています。
例えば池袋駅周辺を歩いてみると、外国人留学生や働く若者の姿は当たり前になっています。飲食店で耳にする言葉も多国籍になり、街全体が国際色豊かになっているのを肌で感じる人も多いでしょう。
この変化は単なる「見かけの多様化」ではなく、東京の人口構造に深く影響を及ぼしています。
外国人労働者が支える日常生活
「外国人が増えている」と聞くと、自分の生活とどう関係するのかピンとこない方もいるかもしれません。しかし、日常を少し思い返してみると、彼らの存在はすぐに見つかります。
- コンビニやスーパーで外国人の店員さんに会計してもらった
- ファストフード店で外国人スタッフに接客された
- 介護施設で外国人の職員が働いている様子を見た
こうした経験は、もはや日常の一部になっています。
実際のデータもそれを裏付けます。東京労働局によると、2024年10月時点で外国人の就労先で最も多いのは 宿泊業・飲食サービス業 で、前年比7%増の 11万7661人 が働いています。飲食店の調理従事者の有効求人倍率は5.27倍、接客・給仕職業従事者は4.91倍。全体平均(1.51倍)を大きく上回っており、深刻な人手不足を補うのが外国人労働者です。
さらに介護分野では、都内の特別養護老人ホームの 77%が外国人職員を雇用。その理由として9割以上が「介護人材の確保」を挙げています。介護職の有効求人倍率は9.51倍と、ほぼ10人の求職者に対して1人しか働き手がいない状況です。外国人が現場の穴を埋めているのは明らかです。
高齢化社会に不可欠な若い力
日本社会が抱える大きな課題の一つが「高齢化」と「労働力不足」です。生産年齢人口(15~64歳)は減少し続け、年金や社会保障の持続性も揺らいでいます。
そんな中で、外国人の若者が労働力として東京を支えているのは、偶然ではなく必然と言えるでしょう。
例えば、介護現場に若い外国人が入ることで、日本人の介護職員の負担が軽減されたり、施設が継続的に運営できたりしています。
また、飲食業や宿泊業では、外国人スタッフが増えることで観光客対応にもプラスの効果が出ています。英語や中国語で接客できる人材がいれば、インバウンド客にとっても安心です。
つまり、外国人は単に「人手不足を補う」だけでなく、「東京をグローバルに開かれた都市へ」押し上げる存在でもあるのです。
生活の現場で起きている変化
私たちが普段利用する街のサービスの裏側で、外国人の若い世代が働き、生活を支えています。
- 深夜営業の飲食店が継続できるのは、外国人スタッフのおかげ
- 高齢者施設で安心して介護を受けられるのは、外国人職員の存在があるから
- 都心の飲食街がにぎわいを保っているのも、彼らが厨房やホールで汗を流しているから
こう考えると、東京の生活の多くはすでに外国人なしでは成り立たない状況にあると気づきます。
それでも残る誤解と不安
一方で、外国人の増加を歓迎しない声もあります。「治安が悪くなるのではないか」「地域の文化が壊されるのではないか」といった不安や、SNS上での排他的な発言も少なくありません。
確かに、急激な変化は地域に戸惑いをもたらすこともあります。しかし、多くの場合は「知らないことからくる不安」です。外国人が実際に地域活動に参加したり、日本のルールやマナーを学んだりすることで、摩擦が少しずつ解消されていく事例も見られます。
こうした「誤解と不安」がどう社会に影響するのかは、次回(第2回)のテーマで詳しく取り上げます。
第1回のまとめ
- 2024年に東京都の人口が約9万人増加、その 8割以上が外国人
- 新宿・豊島区では20代前半の 4割弱が外国人 という実態
- 宿泊・飲食、介護といった生活に欠かせない分野で外国人が働き、都市を支えている
- 外国人は単なる「一時的なゲスト」ではなく、東京の未来を共につくる仲間である
おわりに
東京の人口増加をめぐるニュースは、一見すると数字の話に思えるかもしれません。けれど、その中身を見ていくと、私たちの暮らしと切り離せない現実が浮かび上がります。
コンビニで接客してくれる店員さん、介護施設でお年寄りを支える職員さん、その多くが外国人です。彼らがいるからこそ、東京の街は今の活気を保てています。
次回は、この外国人増加に対して広がる「誤解と不安」、そしてデマや偏見がどのように政策や地域社会を揺るがしているのかを考えます。
📌 参考:
「東京一極集中の実相 <3> 人口増9万人、8割外国人」日本経済新聞(2025年10月2日付)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

