これまでの記事で、MMF(マネー・マーケット・ファンド)の仕組みや復活の背景、デジタル化による進化を見てきました。
では実際に、MMFは私たちの家計や資産運用にどんなメリットがあるのでしょうか?
今回は、預金・国債・社債など他の金融商品と比較しながら考えていきます。
1. 預金との比較
まず一番身近な「銀行預金」と比べてみましょう。
普通預金
- 金利:平均 0.2%前後
- 元本保証あり(ペイオフ制度で1,000万円まで保護)
- いつでも出し入れ自由
MMF
- 予想利回り:0.5%前後(預金の2倍以上になる可能性)
- 元本保証なし(ただし元本割れはほとんどない)
- 解約には数日かかる場合あり
👉 預金より利回りは高いが、ペイオフ対象外。安全性と利回りの「バランス商品」と言えます。
2. 個人向け国債との比較
「安全資産」として人気のある個人向け国債とも比較してみましょう。
個人向け国債(変動10年)
- 金利:0.66%(2025年10月時点、物価や金利情勢で変動)
- 元本保証あり(国が発行するため安全性が高い)
- 中途換金には条件あり(1年未満は不可、途中換金時は一定の利息差し引き)
MMF
- 金利:およそ0.5%前後(市場金利に連動)
- 元本保証はないが、短期運用なのでリスクは低い
- 比較的流動性が高く、換金も柔軟(数日で解約可能)
👉 安全性を重視するなら国債、柔軟性を重視するならMMF。使い分けがポイントです。
3. 社債や定期預金との比較
社債
- 金利:1~2%台もあり、利回りは高め
- 企業の信用リスクがある(倒産すると元本割れ)
定期預金
- 金利:0.3~0.4%程度(銀行によって異なる)
- 元本保証あり
- 満期まで引き出しに制約
MMF
- 社債より低利回りだが、リスクは小さい
- 定期預金よりも有利な利回りが期待できる
- 拘束期間が比較的短い
👉 「リスクを抑えつつ、定期預金より少し有利に」というニーズに合います。
4. 家計にどう活かす?
MMFは、次のような場面で役立ちます。
- 生活防衛資金の一部に
全額を預金に置くのではなく、一部をMMFに回すことで利回りを上げる。 - 使う予定まで数か月あるお金に
すぐに使わない資金を短期間運用する「待機資金」の置き場所として。 - 投資の入口として
株や投資信託に踏み出す前に、「低リスクでお金を増やす感覚」をつかむ商品として。
5. 注意点の再確認
- 元本保証ではない(法律上は投資信託)
- 金利次第で利回りは変動する
- 解約に即日対応できない場合がある
「預金と同じ感覚で全額置く」のではなく、資産の一部を活用するのが現実的です。
まとめ
MMFは、
- 預金より有利、
- 投資より安全、
という「ちょうど中間」に位置する商品です。
復活することで、私たちのお金の選択肢は確実に広がります。
特に「安全性を重視しつつ、少しでも増やしたい」と考える人にとって、心強い存在になるでしょう。
次回の第5回では、シリーズの総まとめとして「金利ある世界の到来が私たちの家計に意味すること」を整理し、MMFをどう位置づけるべきかを考えていきます。
📌 参考:
国内MMF、9年ぶり復活(日本経済新聞 2025年10月2日)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO91675410S5A001C2MM8000/
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
