2025年の今、消費税はかつてないほど国民的な関心を集めています。廃止や縮小を求める声が強まり、昨年7月の参院選では与党が敗北する一因ともなりました。
日々の買い物やサービスの利用で必ず支払っている税金であるにもかかわらず、消費税の仕組みや使い道について正しく理解している人は決して多くありません。
「身近なのに分かりにくい」──このギャップが、政治的不満や制度不信を生み、さらには「滞納ドミノ」という深刻な経済問題を引き起こしています。
消費税は「国民の財布から最も近い税」
私たちは日常生活の中で、消費税を必ず支払っています。コンビニで飲み物を買うときも、ジムで月会費を払うときも、レストランで食事をするときも、必ず請求額に加算されています。
つまり、消費税は最も分かりやすく、最も国民に近い税金のはずです。
しかし、その行方については意外に知られていません。
「誰にどう納めているのか?」「社会保障に使われていると聞くけれど実際はどうなのか?」と問われると、多くの人が首をかしげるのではないでしょうか。
なぜ分かりにくいのか? 仕組みの複雑さ
消費税が理解されにくい最大の理由は、その仕組みにあります。
- 消費者はレジで商品やサービスの代金と一緒に消費税を支払う
- 事業者はいったん消費税を「預かる」
- 仕入れや経費で支払った消費税との差額を、国や地方自治体に納付する
このプロセスの中で、消費者にとっては「支払った税金の行方が見えない」状態が生まれます。国税庁に直接振り込むのではなく、いったん事業者を経由するからです。
また、納付は売上規模によって年1回・年2回・年4回などに分かれており、タイムラグが存在します。この仕組みが「滞納リスク」を高め、結果的に国民の不信感を増幅させているのです。
政治の中で揺れる「消費税」
近年、消費税をめぐる政治的議論は大きく揺れ動いています。
- 「景気が弱いのに消費税は重すぎる」
- 「逆進性(所得が低い人ほど負担が重くなる)が大きい」
- 「社会保障財源としては不可欠」
こうした賛否が繰り返される中で、国民は「結局、消費税は必要なのか」「この税金は正しく使われているのか」と疑問を募らせています。
参院選で与党が敗北した背景には、こうした国民の不満や不信感が確実に存在していました。消費税は「単なる税の問題」ではなく、「政治への信頼」にも直結しているのです。
滞納が示す「制度のほころび」
ここで注目したいのが、近年急増している消費税滞納問題です。
国税庁のデータによると、2024年度に新たに発生した税滞納額は9,925億円と、前年度から24%増。21年ぶりの高水準に達しました。その半分以上が消費税によるもので、5,298億円に上ります。
これは単なる数字の話ではありません。
消費税は「消費者から預かったお金」であるにもかかわらず、事業者が資金繰りに行き詰まり、預かり金に手を付けざるを得なくなっているのです。
この現実は、消費税という制度の構造的な問題を浮き彫りにしています。
消費税が投げかける問い
消費税は「薄く広く国民が負担する税」であり、医療や介護などの社会保障に充てられる大切な財源です。その税収は年間25兆円規模にのぼり、所得税や法人税を上回ります。
それほど重要な税でありながら、
- どう納められているのか
- なぜ滞納が起きるのか
- その結果、社会にどんな影響が出ているのか
といった実態が、国民に十分共有されていないのが現状です。
まとめ 〜次回へのつなぎ
今回の記事では、消費税をめぐる「揺らぎ」と「理解の難しさ」に焦点を当てました。
次回は、実際に破産に追い込まれた企業のケースを取り上げながら、「コロナ禍で加速した滞納ドミノ」の実態を掘り下げていきます。
消費税が国民にとって最も身近な税でありながら、社会全体のリスク要因になっている──この矛盾を理解することが、制度の改善につながる第一歩となるでしょう。
📖参考
「消費税、年5000億円の滞納ドミノ 資金難で手を付けた『預かり金』」日本経済新聞(2025年9月29日)
記事はこちら
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

