2023年8月に国内の金価格が初めて1グラム=1万円を突破してからわずか2年。2025年9月にはついに 2万円の大台 に達しました。
このシリーズでは、
- 第1回:なぜ金価格が上昇しているのか(背景)
- 第2回:2万円突破という最新ニュースとその意味
- 第3回:金投資の方法(地金・積立・ETF)
- 第4回:株・債券・不動産などとの比較
と段階的に見てきました。最終回では、これまでの内容を総まとめし、これからの資産形成において金をどう活用すべきかを提言します。
1. 金価格上昇が示すもの
まず、この数年の急激な上昇は単なる一過性のブームではありません。
- 円安が長期化し、購買力が下がっている
- 世界情勢の不安定さが続いている
- インフレが「例外」ではなく「常態」になりつつある
これらの要因が重なり、金が「資産を守る最後の砦」として評価されているのです。金の2万円突破は、単なる投資の話題ではなく 経済環境の変化を映す鏡 なのです。
2. 投資家の変化 ― 「広がる裾野」
これまで金投資といえば、中高年や富裕層が中心でした。しかし今は、
- 20~30代の新規口座開設が急増
- 小口(20gや50g)の地金が売れ筋
- 「貯金代わりに少しずつ金を持つ」という発想が広がっている
つまり、金は「特別な人の資産」ではなく、「誰でも少しずつ持てる資産」に変わりつつあるのです。これは日本人の資産形成における大きなパラダイム転換といえるでしょう。
3. 金の役割 ― 他の資産との違い
第4回で詳しく比較した通り、金は株・債券・不動産・現金と性質が大きく異なります。
- 株式:成長性はあるが、景気に左右されやすい
- 債券:利息収入はあるが、金利変動に弱い
- 不動産:収益性はあるが、流動性が低い
- 現金:安心感はあるが、インフレに弱い
- 金:利息はないが、購買力を維持しやすい
この性格の違いこそが、金を「分散投資の中で欠かせない要素」にしています。
4. どのくらい持つべきか?
重要なのは「金だけに集中しない」ことです。
多くの専門家は、資産全体の5〜10%程度 を金で保有するのを目安としています。
例えば、1,000万円の金融資産がある人なら、50万〜100万円程度を金に振り分けるイメージです。こうすることで、株式や不動産が値下がりしても、金が資産全体の安定性を高めてくれる可能性があります。
5. 投資初心者へのアドバイス
- まずは積立やETFなど「少額から」始めてみる
- 金を買う目的を「短期で儲けるため」ではなく「長期の資産防衛」と位置づける
- 家計に影響のない範囲で無理なく続ける
金は「ゼロにならない安心資産」ではありますが、万能ではありません。
株式や債券、現金と組み合わせてこそ、真価を発揮します。
6. 金価格2万円突破が投げかける問い
今回の金価格2万円突破は、次のような問いを私たちに突きつけています。
- 円や現金の価値を過信していないか?
- インフレが続く時代にどう資産を守るか?
- 分散投資の必要性をどれだけ理解しているか?
金価格の高騰は、日本人がこれまで慣れ親しんできた「現金中心の資産形成」の限界を示しているのかもしれません。
おわりに ― 金は「終着点」ではなく「通過点」
マーケットアナリストは、今回の2万円突破を「通過点」と見ています。国際市場では1トロイオンス=4000ドルが視野に入るという声もあります。
ただし、価格水準そのものより大事なのは、資産形成の中で金をどう位置づけるか です。
- 株や債券のようにリターンを追求する資産ではない
- 現金や不動産と補完関係を築く資産
- 不確実な時代に「安心材料」となる資産
これが、金価格2万円時代を迎えた今、私たちが改めて学ぶべきポイントではないでしょうか。
シリーズを通じてのまとめ
- 金価格の急上昇は円安・インフレ・世界情勢不安が背景
- 投資層は若年層や小口へと広がりを見せている
- 金は利息を生まないが、購買力維持やリスク分散に有効
- 保有割合は全資産の5〜10%程度が目安
- 金は「資産形成の終着点」ではなく「分散の通過点」
📌 参考
- 金1グラム2万円を突破 高値でも購入、インフレ下で資産防衛(日本経済新聞, 2025年9月29日)
- 世界金協会(World Gold Council)レポート
- 金融庁「分散投資の考え方」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
 
  
  
  
  
