前回までの記事で、金投資の方法(地金・積立・ETF)を整理しました。
しかし、投資において大切なのは「金だけを持てばよい」という発想ではなく、複数の資産を組み合わせる分散投資 です。
今回は、株・債券・不動産といった主要な資産と金を比較し、それぞれの特徴や役割を確認しながら「金が分散投資においてどんな位置づけになるのか」を考えます。
1. 株式と金 ― 成長と安定の対比
株式の特徴
- 企業の成長に応じて株価が上昇する可能性がある
- 配当収入が期待できる
- ただし、景気悪化や企業不祥事で大きく値下がりするリスクがある
金との違い
- 株式は「攻めの資産」、金は「守りの資産」
- 株価が下落する局面で金が上がるケースが多い
- 例えばリーマン・ショック時、株価は大幅に下落したが金は安全資産として買われた
組み合わせの意義
株式と金を両方持つことで、「株安=金高」という逆相関的な動きにより、資産全体のリスクを軽減できる可能性があります。
2. 債券と金 ― 利息と無利息の違い
債券の特徴
- 国債や社債は、一定期間ごとに利息(クーポン)が支払われる
- 元本が保証されるものも多く、比較的安定した資産
- ただし金利上昇局面では債券価格が下落する
金との違い
- 債券は「利息がもらえる」が、金は「利息ゼロ」
- 債券価格は中央銀行の政策金利に大きく左右されるが、金は直接の利回りがなく、インフレや地政学リスクに敏感
組み合わせの意義
「利息を生む債券」と「価値がゼロになりにくい金」を併せ持つことで、インフレ・デフレどちらの局面にも備えやすくなります。
3. 不動産と金 ― 実物資産の性格は似て非なるもの
不動産の特徴
- 家賃収入(インカムゲイン)が得られる
- 長期保有で資産価値の上昇(キャピタルゲイン)も期待できる
- ただし、流動性が低く、売却に時間やコストがかかる
金との違い
- どちらも「実物資産」だが、金は流動性が高く、いつでも現金化可能
- 不動産は地域経済や人口動態に左右されるが、金は世界共通で価値が通用する
組み合わせの意義
「インカム(不動産収益)」と「保有価値(ゴールド)」を組み合わせれば、実物資産同士でも補完関係を築けます。
4. 現金・預金と金 ― 安全のイメージの差
現金・預金の特徴
- 元本保証で安心感がある
- 預金保険制度により一定額まで保護される
- ただしインフレで価値が目減りする
金との違い
- 現金は「名目上の価値が安定」、金は「実質的な購買力を守る」
- 高インフレ時には現金の価値が減り、金の価値が高まる傾向
組み合わせの意義
生活費や緊急資金は現金で確保しつつ、余裕資金の一部を金に振り向けるのが現実的です。
5. 資産分散の観点からの金の役割
ここまで見てきたように、金は株・債券・不動産・現金といった他の資産とは性質が大きく異なります。そのため、分散投資における「リスクヘッジ要員」としての役割を果たします。
- 株の下落に対抗する「防御」
- 債券の利回り低下や通貨不安への備え
- 不動産の流動性リスクを補う流動性
- 現金のインフレリスクに対抗する購買力維持
まさに、資産全体のバランスを保つ潤滑油 と言えるでしょう。
6. どのくらい金を持つべきか?
では実際に、資産の中で金をどれくらい保有するのがよいのでしょうか?
一般的な目安として、
- 全資産の5〜10%程度 を金で持つ
といわれます。
これは「安全資産を持ちながらも、他の成長資産の利益を享受する」ためのバランスです。もちろん年齢・収入・リスク許容度によって適正比率は変わります。
おわりに
金は「利息や配当がない」という意味で“地味な資産”に見えるかもしれません。しかし、株や債券、不動産、現金と比較することで見えてくるのは、どの資産とも性格が異なるからこそ、分散投資の柱になり得る ということです。
金価格が2万円を超えた今、「持たなければならない」ということではありません。むしろ大切なのは、資産全体の中で金をどのように組み込むかを考えることです。
次回(第5回・最終回)は、これまでの内容を総まとめし、「これからの時代にふさわしい資産形成と金の位置づけ」について提言していきます。
📌 参考
- 金1グラム2万円を突破 高値でも購入、インフレ下で資産防衛(日本経済新聞, 2025年9月29日)
- 金融庁「つみたてNISA・分散投資の考え方」
- 世界金協会(World Gold Council)レポート
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
