75歳以上の医療費負担、10月から完全施行 ― 2割負担で何が変わるのか

FP

2025年10月、75歳以上の医療費負担をめぐる制度改正がいよいよ完全施行されます。今回の改正では、これまで経過措置として導入されていた「外来受診の負担増を月3,000円までに抑える」仕組みが終了し、本格的に自己負担が増える方が出てきます。

対象となるのは、全国で約310万人。75歳以上の15%にあたり、平均すると年間で約9,000円程度の負担増になる見込みです。

この記事では、第1回として「今回の制度改正の具体的な内容」と「生活者にどんな影響があるのか」を中心に整理していきます。


75歳以上の医療費負担の仕組み

まずは現行の制度を確認してみましょう。75歳以上(後期高齢者医療制度の対象者)の窓口負担割合は、収入に応じて3段階に分かれています。

  1. 原則1割負担
     多くの高齢者が対象。年収が一定以下の方。
  2. 2割負担(2022年10月導入)
     年収が単身200万円以上、夫婦で320万円以上の方。今回の改正で、経過措置がなくなり、実質的に負担が増える。
  3. 3割負担(現役並み所得者)
     年収が単身383万円以上、夫婦520万円以上。現役世代と同じ自己負担割合。

このうち、今回影響を受けるのは「2割負担」に該当する方々です。


経過措置とは何だったのか?

2022年に導入された2割負担は、現役世代と高齢者の負担バランスを見直す大きな一歩でした。しかし、導入初年度から一気に負担を増やすと生活に支障をきたす可能性があるため、「外来受診での自己負担増は月3,000円まで」という上限が設けられていました。

例えば、医療機関を複数受診して月の自己負担が8,000円増えるはずのケースでも、実際の増額は3,000円で済んだのです。

この仕組みが2025年9月で終了し、10月からは本来の負担割合どおりに支払うことになります。


負担増はどのくらい?

厚生労働省の推計によると、今回の改正で対象になるのは約310万人。全体の75歳以上人口の15%程度にあたります。

  • 平均的な負担増 … 年間で約9,000円
  • 実際の影響 … 医療機関の受診頻度によって大きく変わる

たとえば、慢性的な病気で毎月複数の診療科を受診している方は、負担感がより大きくなるでしょう。一方で、受診が少ない方にとっては影響は限定的です。


なぜ今回の改正が必要なのか?

背景には、医療費全体の増大があります。日本の医療費は高齢者数の増加を上回るペースで膨らんでおり、2024年度には48兆円に達しました。

特に高額な新薬や最新の医療技術の保険適用が広がっており、支え手となる現役世代の負担は年々重くなっています。

75歳以上の医療費の財源は次のようになっています。

  • 税金:50%
  • 現役世代の拠出金:40%
  • 75歳以上本人の保険料:10%

この構造を見ると、「現役世代の負担が非常に重い」ことが分かります。制度を持続可能にするためには、高齢者にも支払い能力に応じて一定の負担を求めることが避けられなくなっているのです。


負担増に対する配慮はあるのか?

もちろん、すべての高齢者に負担が重くのしかかるわけではありません。制度には「高額療養費制度」があり、一定額を超えた医療費については払い戻しが受けられます。

また、低所得者はこれまで通り1割負担が維持されるため、「医療費が払えないから病院に行けない」という状況にならないよう配慮がなされています。

今回の改正で影響を受けるのは、あくまで「一定以上の所得がある方」に限定されています。


生活者の視点から考える

年間9,000円程度の負担増は、「ちょっとした外食を数回控える」くらいの規模かもしれません。しかし、医療費は突発的に増える可能性があるため、家計にとっては無視できない存在です。

例えば:

  • 高血圧や糖尿病などの慢性疾患で定期的に通院している方
  • 複数の診療科にかかっている方
  • 薬代がかさむ方

こうしたケースでは、負担感はさらに強まります。その一方で、医療費の支え手である現役世代の状況を考えると、この負担増が「社会全体の公平性」を保つために必要な一歩だと理解することも大切です。


まとめ

  • 2025年10月から、75歳以上の「2割負担」の経過措置が終了。約310万人が対象となり、年間で平均9,000円程度の負担増に。
  • 制度改正の背景には、48兆円に膨らんだ医療費と、現役世代への重い負担がある。
  • 低所得者は1割負担を維持し、高額療養費制度もあるため「医療を受けられなくなる」リスクは抑えられている。
  • 改正は「支払い能力に応じた負担」への移行を進める第一歩であり、今後の医療保険改革の布石となる。

📖 参考

  • 日本経済新聞「医療保険の負担の改革をさらに進めよ」(2025年9月30日)
  • 厚生労働省「後期高齢者医療制度に関する資料」

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました