60代後半は、事業や資産の「出口」を具体的に考え始める時期です。
体力・判断力が十分にあるうちに、承継設計を固めることが重要になります。
海外口座や海外法人持分、海外不動産を保有している場合、承継設計は国内資産のみの場合よりも複雑です。
本稿では、60代後半から取り組むべき国際承継設計の実務ポイントを整理します。
なぜ60代後半が分岐点なのか
1 判断能力が十分にある
信託・遺言・持分移転などの意思決定は、判断能力が明確なうちに行う必要があります。
2 事業承継と資産承継が交錯する
オーナー経営者の場合、
- 自社株
- 海外子会社
- 個人海外資産
が絡みます。
経営の出口と資産の出口は同時に設計すべき段階です。
3 相続税の具体的試算が現実味を帯びる
評価額や税率を現実的に試算し、納税資金設計を具体化するタイミングです。
ステップ1:海外資産の再棚卸し
まず行うべきは、海外資産の正確な把握です。
- 所在国
- 名義
- 残高・評価額
- 取得経緯
- 税務上の帰属
曖昧なままでは設計はできません。
ステップ2:承継方針の明確化
海外資産について、
- 誰に承継させるのか
- 換価するのか
- 継続保有させるのか
を決めます。
特に海外法人持分は、経営関与の有無が判断基準になります。
ステップ3:税務試算と二重課税確認
海外資産がある場合、
- 日本での相続税
- 所在国での相続税相当税
の両面を確認します。
外国税額控除の限度額や為替影響も含め、試算を行います。
ステップ4:納税資金設計
評価額が大きくても、流動性が低ければ納税資金不足が生じます。
60代後半では、
- 国内流動資産の確保
- 生命保険の活用
- 一部資産の整理
を検討する時期です。
ステップ5:遺言と信託の併用検討
遺言の役割
- 帰属の明確化
- 紛争予防
信託の役割
- 管理権限の確保
- 凍結リスクの軽減
海外資産がある場合、両制度を役割分担させる設計が有効な場合があります。
ステップ6:相続人への説明
国際承継は、家族が理解していなければ機能しません。
- 海外資産の存在
- 承継方針
- 納税見込み
を共有します。
情報非対称が紛争の最大原因です。
整理すべき代表的論点
1 実質帰属
海外法人や名義分散資産がある場合、実質帰属を明確にします。
2 国外財産調書
提出義務と過去の提出状況を確認します。
3 重加算税リスク
曖昧な構造がないか確認します。
「整理」とは売却ではない
海外資産整理は、必ずしも売却や撤退を意味しません。
重要なのは、
- 構造の明確化
- 承継ルートの確定
- 税務リスクの把握
です。
中小企業オーナーの場合の特有視点
60代後半は、経営の安定を維持しながら承継準備を行う最後の好機です。
- 海外子会社を誰が担うか
- 国内事業との連携をどうするか
- 経営権と資産権をどう分離するか
を決めます。
経営と資産を切り離して考えないことが重要です。
結論
60代後半は、国際承継設計の最終調整期です。
重要なのは、
1 海外資産の透明化
2 承継方針の確定
3 税務試算の実施
4 納税資金の確保
5 家族への説明
です。
国際的な情報交換が進む現在、海外資産は見えない資産ではありません。
承継設計は、「いつか」ではなく「今」始めることが、最も合理的な選択となります。
参考
税のしるべ
「6事務年度の租税条約に基づく情報交換事績、過去最多のCRS情報を受領」
2026年2月9日付
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
