はじめに
老後の住まい戦略というと、「定年後に考えるもの」というイメージが根強くあります。
しかし実際には、50代と60代では、住まいに対する判断軸が大きく異なります。
同じ家、同じ制度を前にしても、
・選べる選択肢
・許容できるリスク
・時間の使い方
が違うからです。
本稿では、50代と60代それぞれの段階で、住まいをどう捉え、何を優先すべきかを整理します。
50代の住まい戦略 ―「選択肢を増やす」時期
50代は、老後に向けた住まい戦略において、最も自由度が高い時期です。
50代の特徴
・収入がまだ安定している
・住宅ローンの見直しが可能
・体力、判断力に余裕がある
・住み替えの市場価値が高い
この時期の住まい戦略のキーワードは、決めないことを決めるです。
50代でやるべき住まいの整理
50代では、次の問いに答えを出すことが重要です。
・この家は将来も住み続けられるか
・子どもは住む可能性があるか
・売るとしたら、今いくらくらいか
この段階で「売る」「残す」を決断する必要はありません。
ただし、選べる状態にしておくことが重要です。
・資料を揃える
・立地や性能の弱点を把握する
・修繕の見通しを立てる
50代は、住まいに関する情報整備の時期と言えます。
60代の住まい戦略 ―「現実に合わせる」時期
60代に入ると、住まい戦略の前提が変わります。
60代の特徴
・収入が年金中心に移行
・健康リスクが現実味を帯びる
・判断を先送りしにくくなる
・住み替えのハードルが上がる
この時期のキーワードは、持ち続けられるかどうかです。
60代で重視すべき視点
60代では、住まいを「資産」ではなく、生活インフラとして評価します。
・この家で10年後も暮らせるか
・固定費は年金ベースで回るか
・介護や通院に対応できるか
ここで無理があると感じた場合、
「もう少し様子を見る」
という選択は、リスクを高める可能性があります。
50代と60代で異なる判断のスピード
住まい戦略で大きな違いが出るのが、判断スピードです。
50代では、
・仮決め
・試算
・比較
が許されます。
一方、60代では、
・決める
・動く
・形にする
という行動が求められます。
同じ「住み替え検討」でも、
50代は準備、60代は実行
という位置づけになります。
住宅ローン控除との距離感の違い
50代では、住宅ローン控除は
「今の家計を整える制度」
として意味を持ちます。
一方、60代では、
控除の有無よりも、
・ローン残高
・完済時期
・住居費の固定化
が重要になります。
60代に入っても控除に引きずられて判断を遅らせると、
住まいの自由度が一気に下がる点に注意が必要です。
50代でやっておくと60代が楽になること
50代のうちに次の準備ができていると、60代の選択が非常に楽になります。
・子どもが住まない前提の確認
・家の終い方の方向性
・売却・賃貸・住み続けるのシミュレーション
逆に、これらを60代になってから初めて考えると、
・時間
・体力
・判断力
のすべてに負荷がかかります。
60代で無理をしないための考え方
60代の住まい戦略で大切なのは、
「正解を探さない」
ことです。
・完璧な住まい
・最適なタイミング
は存在しません。
それよりも、
・今の自分に無理がないか
・次に動ける余地があるか
を基準に判断することが重要です。
おわりに
50代と60代は、連続していますが、住まい戦略の役割は明確に異なります。
50代は、
選択肢を増やす時期。
60代は、
現実に合わせて整理する時期。
この違いを意識するだけで、老後の住まいは格段に楽になります。
住まいは、人生の後半を支える最大のインフラです。
年齢に応じて役割を切り替えることが、
「詰まらない老後」への最短ルートと言えるでしょう。
参考
税のしるべ
国土交通省 高齢者の住まい・住宅政策資料
国税庁 住宅・不動産税制関係資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
