3メガバンクが動いた ― 日本発「ステーブルコイン」時代の幕開け

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2025年、日本の金融システムに新たな動きが起きようとしています。
三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3メガバンクが、円や米ドルなどの法定通貨と価値が連動する「ステーブルコイン」を共同で発行する方針を固めました。

第一弾の利用先は、三菱商事。日本を代表する総合商社が社内の資金決済に活用を始める見込みです。
これが何を意味するのか――日本の金融にとって、そして私たちにとってどんな変化が訪れるのかを整理してみましょう。


💡 ステーブルコインとは?

ステーブルコイン(Stablecoin)とは、ドルや円といった「法定通貨」に価値を連動させたデジタル通貨のことです。

ビットコインのような仮想通貨と違い、価格が安定しているのが特徴。
発行者が同額の裏付け資産(預金・国債など)を保有しているため、1コイン=1円(または1ドル)の価値を保ちやすい仕組みです。

ネット上で瞬時に送金・決済できるうえ、ブロックチェーン技術を使うことで低コスト・高セキュリティな決済が可能になります。


🏦 なぜ3メガバンクが参入するのか

3メガが連携してステーブルコインを発行する背景には、「日本の決済インフラを守る」という危機感があります。

近年、米ドル連動型のステーブルコイン(例:USDC、USDTなど)が世界的に普及し、日本のフィンテック企業も米国発の仕組みを利用するケースが増えています。
このままでは、日本国内の資金決済が「ドル経済圏」に取り込まれかねない――そうした警戒感が金融界にあります。

3メガは規格を統一し、国内での共通インフラとして使える円建てステーブルコインを整備することで、海外勢に対抗しようとしているのです。


🌐 三菱商事が先行利用 ― 国際送金のコスト削減へ

第1弾の利用者となるのは、三菱商事。
同社は240社を超える事業会社を抱え、日常的に国内外で送金を行っています。

これまで国際送金は「SWIFT(国際銀行間通信協会)」のネットワークを使うのが主流で、

  • 送金に数日かかる
  • 手数料が送金額の10%を超えることもある

といった課題がありました。

ステーブルコインを使えば、送金時間は70秒・手数料は1円以下(フィンテック企業JPYCの事例)まで短縮可能。
三菱商事が先行利用するのは、まさにこの「コスト革命」を狙った動きです。


🔐 信託型ステーブルコイン ― 安全性をどう確保するか

3メガが採用するのは「信託型」と呼ばれる仕組み。
発行したステーブルコインと同額の資金を信託銀行に預け、信託財産として保全します。

この方式ならば、万一発行者にトラブルがあっても、信託財産は利用者に保護される。
高額決済にも安心して使えることから、企業間取引(BtoB決済)に最適です。

三菱UFJ信託銀行が連携し、信託スキームの安全性を高めます。


🧭 今後の展望 ― 企業決済から個人の「日常」へ

3メガの狙いは、まず法人決済での普及です。
しかし、規格が統一されれば、将来的には個人間送金(P2P)やEC決済など、私たちの生活にも広がる可能性があります。

たとえば:

  • ネットショッピングでステーブルコイン払い
  • 海外送金がワンタップで完了
  • 為替変動リスクを抑えた資産管理

こうした「デジタル円経済圏」が現実味を帯びてきます。


✨ まとめ ― 日本版ステーブルコインが拓く未来

ステーブルコインは、単なる「仮想通貨の安定版」ではありません。
金融・決済・国際競争力を再設計するインフラです。

3メガバンクが共通規格で動き出すという事実は、
ブロックチェーンの時代における「銀行の役割再定義」とも言えるでしょう。

今後、企業がどのように使いこなしていくか、そして個人の生活にどう影響するか――
「日本発のデジタル円」が試される年になりそうです。


📰 出典
日本経済新聞(2025年10月18日朝刊)「3メガ銀がステーブルコイン」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO92016340Y5A011C2MM8000/


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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