2026年1月から、退職金課税制度のルールが一部見直されました。
今回の改正は、退職金と確定拠出年金の一時金(いわゆるDC一時金)を複数回受け取る人にとって、税負担に大きな影響を及ぼす内容です。
一見すると細かな制度変更に見えますが、受け取りのタイミング次第では、退職所得控除を十分に使えなくなる可能性もあります。
本記事では、2026年から適用された退職金課税制度の改正内容を整理し、年金世代・現役世代の双方にとってどのような影響があるのかを解説します。
退職金課税の基本と今回の改正の位置づけ
退職金は、長年の勤務に対する後払い的な性格を持つため、税制上は「退職所得」として優遇されています。
具体的には、勤続年数に応じた退職所得控除を差し引いたうえで、課税対象額を2分の1にする仕組みが設けられています。
ただし、退職金を複数回受け取る場合には、勤続年数の重複を調整するルールがありました。
今回の改正は、この「調整期間」を延長する点が最大のポイントです。
5年ルールから10年ルールへ
これまで、退職金やDC一時金を受け取った後、5年以上の間隔を空けて次の退職金を受け取れば、それぞれで退職所得控除を満額使えるとされてきました。
いわゆる「5年ルール」です。
2026年からは、この期間が10年に延長されました。
つまり、DC一時金を60歳で受け取った場合、その後に退職金を受け取るまで10年以上空けなければ、退職所得控除が重複調整されることになります。
現実的には、60歳でDC一時金を受け取り、65歳前後で退職金を受け取るケースは少なくありません。
この場合、改正後は退職所得控除の一部が使えず、実質的な税負担が増える可能性があります。
年金世代・現役世代への影響
この改正は、すべての人に同じ影響を与えるわけではありません。
特に影響を受けやすいのは、確定拠出年金に加入しており、一時金での受け取りを検討している人です。
60歳時点でDC一時金を受け取るか、年金形式で受け取るかによって、その後の退職金課税が大きく変わる可能性があります。
一方で、勤務年数が長く、退職時期が70歳近くになる人であれば、影響が限定的なケースもあります。
重要なのは、「退職金の受け取り方は退職時点だけの問題ではない」という点です。
現役世代のうちから、将来の受け取り方を見据えて考えておく必要があります。
企業実務にも広がる影響
今回の改正は、個人だけでなく企業の実務にも影響を及ぼします。
退職所得の受給に関する申告書の保存期間は、これまでの7年から10年に延長されました。
また、退職所得の源泉徴収票についても、提出義務の範囲が拡大されています。
これまでは役員分のみが市区町村への提出対象でしたが、2026年以降は一般従業員分も含め、すべて提出が必要になります。
企業にとっては、書類管理体制や事務フローの見直しが欠かせません。
同時に、従業員に対して制度改正の内容を正しく説明する責任も増しています。
受け取り方を考える際の注意点
注意したいのは、税負担を軽減するために退職金の支給時期を恣意的に変更することは、原則として認められない点です。
退職金の支給時期は、退職金規程に基づいて判断されるため、企業側が自由に調整できるものではありません。
個人としてできるのは、DC一時金と退職金の受け取り方について、早めに情報を整理し、必要に応じて専門家に相談することです。
制度を正しく理解したうえで、自分にとって不利にならない選択をすることが重要です。
結論
2026年から始まった退職金課税制度の改正は、「10年ルール」への変更を通じて、退職金の受け取り方に中長期的な影響を与えます。
これまで当たり前とされてきた受け取り方が、必ずしも最適とは限らなくなりました。
退職は一度きりのイベントですが、その準備は何年も前から始まります。
制度改正をきっかけに、退職金と年金の受け取り方をあらためて整理し、自分自身のライフプランと照らし合わせて考えることが、これからの時代には求められています。
参考
・企業実務 2026年2月号
・社会保険労務士・税理士 寺田慎也「退職金課税制度の改正点と実務対応」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

