令和8年度税制改正大綱において、
実務への影響が最も大きい分野の一つが、消費税とインボイス制度です。
制度開始当初は、
「導入するか、しないか」
「登録するか、しないか」
が大きな論点でした。
しかし今回の改正からは、
制度を前提としたうえで、負担をどう調整していくか
という段階に入ったことが、はっきりと読み取れます。
第7回では、
- 経過措置の位置づけ
- 2割特例から3割負担へ進む意味(仕入税額控除の経過措置)
- 事業者が今後意識すべき視点
を、レベル3の視点で整理します。
インボイス制度は「定着」を前提に動いている
まず重要なのは、
インボイス制度が撤回や大幅な後退を前提とした制度ではない、
という点です。
令和8年度税制改正大綱では、
インボイス制度を
消費税の基本的な仕組みとして定着させる
という姿勢が明確に示されています。
経過措置は、制度そのものを緩めるためではなく、
移行のための猶予期間
と位置づけられています。
経過措置の役割を整理する
インボイス制度導入にあたり、
免税事業者との取引を一気に切り替えることは、
現実的ではありませんでした。
そこで設けられたのが、
免税事業者からの仕入れについても、
一定割合の仕入税額控除を認める経過措置です。
この措置は、
- 制度への適応
- 取引関係の見直し
- 価格交渉の時間確保
を目的としたものです。
2割特例は「恒久措置」ではない
現在、多くの事業者が利用している
いわゆる2割特例は、
消費税負担を大きく緩和する仕組みとして機能しています。
しかし、税制改正大綱では、
この特例が
恒久的に続く前提ではない
ことが、明確に示されています。
3割負担へ進むことの意味
経過措置が進むと、
免税事業者との取引に関する仕入税額控除の割合は、
段階的に見直され、3割負担の水準へ進みます。
これは単なる数字の変更ではありません。
税制としては、
「免税事業者との取引に伴う税負担を、
いつまでも課税事業者側で肩代わりする構造は維持しない」
という判断を示しています。
課税事業者にとっての実務的な意味
課税事業者の立場から見ると、
2割特例から3割負担への移行は、
次の点を意味します。
- 免税事業者との取引コストが、徐々に顕在化する
- 経過措置を前提とした価格設定が成り立ちにくくなる
- 取引条件の見直しを先送りできなくなる
「今は大丈夫」という感覚が、
通用しなくなる段階に入ったといえます。
免税事業者にとっての意味
免税事業者にとっても、
この流れは無関係ではありません。
課税事業者側の負担が重くなるほど、
- 価格交渉
- 取引条件の変更
- 登録の要請
といった動きが、現実的に強まります。
インボイス発行事業者として登録するかどうかは、
「制度の問題」ではなく、
取引環境の問題として考える必要があります。
「登録すれば解決」ではない理由
インボイス発行事業者として登録すれば、
取引関係は維持しやすくなります。
一方で、
- 消費税の申告・納付
- 帳簿管理の厳格化
- 資金繰りへの影響
が発生します。
2割特例から3割負担へ進む流れは、
登録の是非を
短期的な負担軽減だけで判断する段階が終わった
ことを示しています。
プラットフォーム取引への整理も進む
デジタルプラットフォームを介した取引についても、
消費税の申告・納付主体を明確にする整理が進められています。
誰が消費税を負担し、
誰が申告・納付するのかを曖昧にしないことで、
課税の抜け落ちを防ぐ狙いがあります。
個人でプラットフォームを利用している場合でも、
自分の立場が
免税なのか、課税なのかを
改めて確認する必要があります。
税制が示している方向性
第7回の改正から読み取れるのは、
次のような税制の姿勢です。
- インボイス制度は維持・定着させる
- 経過措置は段階的に縮小する
- 負担の所在を明確にする
これは、消費税が
将来にわたって重要な財源である
ことを前提とした動きです。
おわりに
インボイス制度を巡る議論は、
感情的になりやすい分野です。
しかし、令和8年度税制改正大綱は、
「どうあるべきか」ではなく、
「どう運用していくか」
という段階に入ったことを示しています。
2割特例から3割負担へ進む流れは、
制度が次のフェーズに入った象徴といえるでしょう。
次回は、相続税・法人税制について、
資産評価や投資促進の視点から、
今回の改正が何を意図しているのかを整理します。
参考
・自由民主党「令和8年度税制改正大綱」
・財務省「消費税制度・インボイス制度に関する資料」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
