高齢者「病院通い放題」見直しへ――外来特例の縮小が示す社会保障改革の方向性

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医療費の増大を背景に、与野党が70歳以上の高齢者を対象とする「外来特例」の見直しに動き始めました。特例によって、月ごとの自己負担額が上限に達した後は事実上「通院し放題」となる現行制度を、より持続可能な仕組みに改めようというものです。高齢化の進行と現役世代の保険料負担の上昇を踏まえた、超党派的な社会保障改革の試金石となりそうです。

1. 外来特例とは何か

高額療養費制度は、医療費が高額になった際に自己負担の上限を設ける仕組みです。70歳以上の高齢者には、所得区分に応じて一般より低い上限額が設定されており、特に住民税非課税世帯では「月8,000円」で済むケースもあります。このため、慢性疾患などで頻繁に受診する人にとっては大きな安心材料である一方、「実質的に通院し放題」との指摘もあり、医療費抑制の観点から問題視されてきました。

2. 改革の背景と政治的動き

政府は2026年度予算編成に向けて、外来特例の縮小を含む高額療養費制度の見直しを検討しています。石破前政権が一度取り下げた自己負担増案を再び議論に戻す構えです。自民党と日本維新の会は、社会保障改革を進めるための協議会を設置し、外来特例のほか、OTC(市販薬)類似薬の自己負担見直しなどを俎上に載せました。

野党側でも理解が広がっています。立憲民主党は「政争の具にしない」との立場を示し、公明党も「維持には一定の負担増が必要」として縮小を容認する姿勢です。与野党が協力して医療制度改革を進めるのは珍しく、財源確保と公平な負担の観点からも注目されています。

3. 改革が意味するもの

今回の議論の背景には、現役世代の保険料上昇が急速に進んでいることがあります。維新は選挙公約で「医療費4兆円削減・保険料6万円減」を掲げましたが、こうした提案の土台には「給付の見直しと負担の公平化」があります。少子高齢化の進行により、現役世代が高齢者医療を支える構造が限界に近づいているため、社会保障全体のバランスを取り直す必要があるのです。

2026年度は、診療報酬改定や介護保険制度の見直しも予定されており、医療・介護の両面で「どこまで公費で支えるか」が問われます。物価高や人件費上昇で医療機関の経営が厳しくなるなか、単なる負担増ではなく「持続可能な社会保障の再設計」が求められています。


結論

「通院し放題」と呼ばれる外来特例の見直しは、医療費の公平性と持続可能性をめぐる社会全体の課題です。高齢者に過度な負担を求めない配慮が必要である一方、現役世代の保険料を抑えるためには避けて通れない議論でもあります。与野党の垣根を越えた今回の動きは、社会保障の「給付と負担」をどう再構築するかという、日本社会の根幹に関わる一歩といえるでしょう。


出典

  • 日本経済新聞「高齢者『病院通い放題』抑制 自維立公、特例見直し容認論」(2025年11月13日)

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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