高齢期・相続を見据えた公益信託の使いどころ――老後の資産設計と社会還元をどう両立させるか

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高齢期に入ると、資産形成から資産の使い方へと関心が移っていきます。
老後資金としてどこまで手元に残すのか、相続人にどのように引き継ぐのか、あるいは社会に還元するのかといった判断は、多くの人にとって悩ましいテーマです。

こうした局面で、公益信託は「資産を手放す」か「残す」かの二者択一ではない選択肢を提供します。本稿では、高齢期や相続を見据えた場面で、公益信託がどのように活用できるのか、その使いどころを整理します。

高齢期の資産設計における基本的な視点

高齢期の資産設計では、生活費や医療・介護費といった将来不確実な支出への備えが最優先となります。その一方で、すべての資産を使い切るとは限らず、結果として相続財産が残るケースも少なくありません。

この段階では、「使わない可能性のある資産」をどう位置付けるかが重要になります。
公益信託は、生活資金とは切り分けた形で、社会的な目的に資産を活用するための器として機能します。

相続対策としての公益信託の位置付け

相続対策というと、相続税の軽減や遺産分割の円滑化に目が向きがちですが、それだけが目的ではありません。
公益信託を活用することで、相続財産の一部を公益目的に充て、相続の対象から切り離すという考え方も成り立ちます。

特に、相続人がいない場合や、相続人に多額の財産を残す意向がない場合には、公益信託は有力な選択肢となります。

遺言との違いと補完関係

公益目的で財産を残す方法としては、遺言による寄附も考えられます。
これに対し、公益信託は生前に設計・運用を開始できる点が大きな違いです。

生前に公益信託を設定することで、本人の意思を反映した形で資産が使われていることを、自ら確認することができます。
遺言は「死後の意思表示」であるのに対し、公益信託は「生きている間からの意思実現」と位置付けることができます。

含み益のある資産の活用場面

高齢期には、長年保有してきた不動産や有価証券など、含み益のある資産をどう扱うかが問題になります。
これらをそのまま相続させると、相続税だけでなく、将来的な譲渡所得税の負担が生じる可能性があります。

公益信託への拠出に際して譲渡所得税等の非課税特例を活用できれば、税負担を抑えつつ公益目的に資産を活用する道が開けます。
もっとも、非課税特例は承認制であるため、事前の設計と確認が不可欠です。

家族関係への配慮という視点

高齢期の資産処分は、家族関係に影響を及ぼすことがあります。
公益信託を活用する場合でも、相続人となる家族に対して、なぜその選択をしたのかを説明しておくことが重要です。

公益信託は、家族から財産を奪うための制度ではなく、本人の価値観に基づいて資産の一部を社会に還元するための制度です。
その位置付けを共有することで、不要な誤解や対立を避けることにつながります。

高齢期に公益信託を設計する際の注意点

高齢期に公益信託を設計する場合、判断能力や意思確認の問題にも留意が必要です。
信託設定時の意思能力が争われないよう、専門家の関与や記録の残し方が重要になります。

また、信託設定後の生活資金が十分に確保されているかどうかも、実務上の重要なチェックポイントです。
公益信託は、生活の安定を損なわない範囲で設計されるべき制度です。

結論

公益信託は、高齢期や相続を見据えた資産設計において、資産を社会に還元するための柔軟な選択肢を提供します。
遺言や相続対策と対立するものではなく、それらを補完しながら、本人の価値観を反映した資産の使い方を可能にします。

老後資金の確保を前提としたうえで、「使わないかもしれない資産」をどう活かすかを考える場面において、公益信託は検討に値する制度といえるでしょう。

参考

・税のしるべ 2026年1月19日
 公益信託に財産を拠出した場合における譲渡所得税等の非課税の特例のあらまし


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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