高額療養費制度の見直しと「通い放題」問題― 社会保障の持続性をどう確保するか ―

FP

高市政権のもとで進められる社会保障制度の見直し。その中でも注目を集めているのが、高額療養費制度の再検討です。医療費の自己負担を一定額に抑えるこの制度は、多くの国民にとって「安心の支え」となってきました。しかし、制度の特例として70歳以上に認められている外来診療の上限額――いわば「通い放題」特例――が、制度の持続性を揺るがす要因として議論を呼んでいます。

高額療養費制度は、公的医療保険でカバーしきれない高額な医療費の負担を軽減する仕組みです。所得に応じて月ごとの自己負担額に上限を設け、重い病気や長期入院の際に家計を守る役割を果たしてきました。

一方で、70歳以上の高齢者には外来診療に関する特例が設けられています。たとえば現役並みの所得がない層では月1万8000円、住民税非課税の人では月8000円が上限です。つまり、外来についてはその額を超える自己負担が発生しない仕組みとなっており、実質的に「通い放題」とも言える制度です。

この特例は、高齢者の受診機会を保障する一方で、「本来の高額療養費の趣旨から逸脱している」との指摘があります。厚生労働省によれば、70~74歳で住民税非課税の層の約半数、現役並み所得のない層の2割弱がこの外来特例を利用しています。受診回数の増加を招きやすく、必要性の乏しい通院まで支援してしまう恐れがあるのです。

当初、政府は2025年夏から段階的に自己負担上限額を引き上げる計画を立てていました。平均給与の伸びを反映し、所得区分を5段階から13段階に細分化する案もありました。しかし、「患者の声を十分に反映していない」との批判が高まり、計画は凍結されました。厚労省は改めて患者団体を含む専門委員会を設置し、再検討に入りました。

ただし改革の遅れは、現役世代へのしわ寄せを招きます。医療費の半分を負担する保険料は、主に現役世代が支払っています。健康保険組合によると、1カ月1000万円を超える高額医療は2024年度に2300件以上に達し、10年前の約8倍に増加しました。新薬の普及による医療費の高騰が背景にあります。制度の持続性を保つには、給付と負担のバランスを見直すことが避けられません。

一方で、首相自身は「患者負担上限額を引き上げるべきではない」との立場を示しつつも、国会答弁では「負担能力に応じてどう分かち合うかを検討していく」と述べています。すなわち、制度改正は避けられないものの、その方法とタイミングを慎重に見極めようとしている姿勢がうかがえます。

結論

高額療養費制度は、誰もが安心して医療を受けられる社会を支える重要な仕組みです。しかし、医療技術の進歩と高齢化が進む中で、制度の負担は確実に増大しています。外来特例のような「小さな歪み」が積み重なれば、全体の持続性を損なう可能性もあります。

社会保障の本質は「支え合い」にあります。過度な負担を求めるのでも、安易な給付拡大を続けるのでもなく、世代を超えて公平なバランスを探る議論が求められています。高市政権が年内に打ち出す方針は、その分岐点となるでしょう。

出典

・日本経済新聞「社会保障5つの論点(2)病院『通い放題』の功罪」(2025年11月12日)
・厚生労働省「高額療養費制度に関する資料」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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