高市政権はどこへ向かう?積極財政×金融緩和が生む円安リスクと、家計・企業のこれから

FP

高市早苗政権の発足後、円安が一段と進み、物価高の行方や金融政策との関係に注目が集まっています。政府は積極財政による経済支援を掲げる一方、日銀は利上げを慎重に進めています。この“組み合わせ”が、日本経済にどのような影響を及ぼすのでしょうか。今回は、高市首相と日銀・植田総裁の会談内容や市場の反応を手がかりに、一般の生活者にも関わるポイントを整理します。

1. 積極財政と金融緩和の“ねじれ”

高市政権は、物価高対策や成長投資を重視する姿勢を示しており、総合経済対策でも食料品支援や地域向けの交付金拡充を打ち出しています。一方、日銀は「2%の安定的な物価上昇」を目指し、段階的な利上げを進める方針です。

通常であれば、財政拡大(政府の支出増)と金融緩和(低金利)は景気を押し上げる組み合わせですが、現在の日本では“副作用”が意識されています。それが 円安の加速 です。

2. 円安の背景:市場は何を見ているのか

高市首相が就任した10月以降、円相場は1ドル147円台から155円近辺へと円安が進みました。市場では次のような見方が強まっています。

  • 積極財政=物価上昇圧力になりやすい
       ↓
  • 物価対策を優先する政権は利上げを急がないのでは?
       ↓
  • 金利差が縮まらず、円が売られやすい

実際、野村証券のストラテジストも「財政拡大が追加利上げの遅れにつながるとの見方が円売りを促した」と指摘しています。

金融政策と財政政策の“速度差”が、市場で円安を意識させていると言えます。

3. 長期金利の上昇と生活への影響

円安に加え、国債市場では長期金利が急上昇し、20年国債利回りは約26年ぶりの水準となりました。長期金利の上昇は私たちの生活にも波及します。

  • 住宅ローンの金利が上がりやすい
  • 企業の借入コストが増え、設備投資の慎重化につながる
  • 家計の支出増と企業の負担増が同時に発生

円安で輸入物価が上がり、金利で資金コストが上がる──政府の経済支援策の効果を弱める構図になりかねません。

4. 日銀は利上げに向かうのか

市場では、

  • 12月会合:利上げ確率28%
  • 1月会合:42%
    とされ、合わせて70%が「近々の利上げ」を見込んでいます。

日銀内でも「物価高が続けば政権も利上げやむなしとなる」との見方があり、政府と日銀の“協調”のあり方が焦点になりつつあります。

12月1日の植田総裁の講演は、次の利上げのヒントになるとして市場の注目を集めています。


結論

高市政権は、経済支援を目的とした積極財政を進めながら、日銀の金融政策に直接注文をつけない姿勢をみせていますが、円安と物価高の進行はこれからの政策運営の大きな壁になります。

  • 財政拡大 → 利上げ遅れの観測 → 円安
  • 円安 → 物価高・生活負担増
  • 金利上昇 → ローン金利上昇・企業負担増
    という連鎖が意識されており、どこで「バランスを取るか」が今後の最大のテーマです。

生活者としても、

  • ローン金利の動向
  • 食料品やエネルギーの価格
  • 今後の政策(給付金・減税・支援策)
    を注視しつつ、家計の見直しを段階的に進めることが重要になります。

政策と市場が互いに影響しあう局面だからこそ、為替・金利・物価の変化を丁寧に追う姿勢が求められます。


出典

  • 日本経済新聞「高市政権、積極財政と金融緩和の両立に円安の壁」
  • 日銀総裁会見・市場データ等(2025年11月時点)

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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