高市政権発足後、株式市場ではいわゆる高市トレードが定着しつつあります。日経平均株価は高値圏で推移し、海外投資家の資金流入も続いています。
一方で、「株高なのに生活が楽にならない」「自分には関係ない」という声も根強く聞かれます。
株価の上昇は誰の利益なのか。
そして、その利益はなぜ家計や老後の安心につながりにくいのか。
第二回では、高市トレードの利益配分という視点から、日本経済の構造を整理します。
株高は誰にとっての追い風か
株価が上昇すると、まず恩恵を受けるのは株式を保有する投資家です。特に、株式比率の高い機関投資家や海外投資家は、相場の上昇を直接的に利益として享受します。
日本では、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)をはじめとする年金資金も株式市場で運用されています。このため、株高は年金財政にとっても一定のプラス要因になります。
しかし、ここで重要なのは、その利益がどこまで生活者に還元されているかという点です。株価が上がっても、賃金が上がらず、物価上昇に追いつかなければ、家計の実感は改善しません。
なぜ株高が賃金に結びつきにくいのか
日本企業の特徴として、利益を内部にため込みやすい構造が指摘されてきました。内部留保は不測の事態への備えとして一定の合理性がありますが、過度に積み上がると、賃上げや投資が抑制されます。
株価は上がっているのに、賃金は思うように上がらない。このズレが、株高と生活実感の乖離を生んでいます。
高市トレードが市場では歓迎されている一方で、生活者が距離を感じる理由はここにあります。
年金世代から見た株高の意味
年金世代にとって、株高は一見すると遠い世界の話に見えます。しかし実際には、年金資産の運用や企業年金、退職金制度を通じて、間接的に株式市場と結びついています。
株価が持続的に上昇し、企業価値が安定すれば、年金運用の安定性も高まります。一方で、株高が短期的な期待先行にとどまり、実体経済や賃金に波及しなければ、年金世代が感じる安心感は限定的なものにとどまります。
重要なのは、株高が一時的な数字で終わらず、長期的な収益力の向上につながるかどうかです。
株主還元と社会全体のバランス
近年、日本企業でも配当や自社株買いを拡充する動きが見られます。これは株主還元の強化という点では前進ですが、それだけで十分とは言えません。
配当や自社株買いは、株主に直接利益をもたらします。しかし、賃金や設備投資、人材育成といった分野への資金配分が伴わなければ、経済全体の底上げにはつながりません。
株主、従業員、取引先、社会全体のバランスをどう取るのか。この視点こそが、次の段階の課題です。
高市トレードが抱える構造的リスク
高市トレードは、政策推進力への期待を背景に成立しています。しかし、その期待が剥落した場合、市場は一気に冷え込む可能性があります。
特に、株高の恩恵が一部に偏っている場合、政治的な支持基盤との間にズレが生じやすくなります。
株高を持続させるためには、市場だけでなく、生活者の納得感が不可欠です。分配の実感が伴わない株高は、長期的には不安定要因となります。
結論
高市トレードを生活につなげるために
高市トレードが意味を持つのは、株価が上がったという事実そのものではありません。その果実が、賃金、雇用、年金、老後の安心へとどう波及するかにかかっています。
株高の利益配分を見直し、企業の稼ぐ力を社会全体に循環させる。その仕組みづくりが進まなければ、高市トレードは一過性の現象で終わってしまいます。
株価の先にある生活をどう描くのか。
それが、これからの日本経済に問われている本当のテーマです。
参考
日本経済新聞「高市トレード持続のカギ」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
