「投資はリスクが怖い」「元本保証が安心」。
そんな考えが常識だったのは、物価が上がらない“デフレ時代”の話です。
いまや物価は毎年のように上がり、円の購買力は静かに目減りしています。つまり、「現金を持ち続けること」自体がリスクになりつつあるのです。
インフレ下の資産運用は、もはや“攻め”ではなく“守り”。
本稿では、家計をインフレから防衛するための3本柱 ― 外貨・株式・不動産 ― を整理し、分散戦略の実践ポイントを解説します。
1. 外貨資産 ― 円安リスクへの「保険」
通貨の分散は投資ではなくリスク管理
円安が進むたびに「もっとドルを持っておけばよかった」と感じる方も多いでしょう。
実は、外貨資産を保有することは「海外投資」ではなく、円の価値が下がるリスクへの保険です。
外貨預金・外貨MMF・海外ETFの違い
| 種類 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 外貨預金 | 為替差益が狙える。短期保有も可能。 | 為替手数料が高い。元本保証なし。 |
| 外貨MMF | 安定性が高く、金利水準も高い。 | 為替リスクあり。円転時の課税に注意。 |
| 海外ETF | 世界株・債券などへ直接分散投資。 | 為替と市場リスクの二重管理が必要。 |
ドル・ユーロ・豪ドルなど、複数通貨を組み合わせるとリスク分散効果が高まります。
「外貨を持つ=リスクを取る」ではなく、「円だけに依存しない」ための防衛策と考えるのがポイントです。
2. 株式・投資信託 ― インフレを味方につける資産
企業の成長は物価上昇とともに進む
インフレ環境では、物価が上がる分だけ企業の売上も増えます。
つまり、株式はインフレとともに価値を伸ばす性質を持つのです。
とくに価格転嫁力のある企業(エネルギー・食品・インフラ・IT)は、実質的にインフレ防衛力が強いといえます。
投資信託での分散が基本
株式単体では値動きが激しくなりがちですが、投資信託を通じて分散投資を行えば、「広く・小さく・長く」リスクを抑えながら資産形成が可能です。
たとえば新NISA制度を活用すれば、
- 積立投資枠:インデックス型ファンドで長期運用
- 成長投資枠:配当・高配当株・インフレ関連ETF
を組み合わせることで、「守りと攻めのハイブリッド運用」が実現します。
例:防衛型ポートフォリオ(イメージ)
- 国内株式(インフラ・消費関連)20%
- 海外株式(米国・欧州)30%
- 債券・MMF・外貨預金30%
- 金・REITなど実物資産20%
「投資は怖い」ではなく、「投資をしない方が怖い」時代へ。
インフレは避けられない以上、企業の成長に乗る=購買力を守る手段となるのです。
3. 不動産・REIT ― 実物資産としての“生活防衛”
物価上昇とともに資産価値が動く
不動産はインフレに連動する代表的な“実物資産”です。
建築コストや土地価格が上昇すれば、保有不動産の評価額も上がります。
さらに、家賃が物価上昇に合わせて上がるため、インカム(収入)面でも防衛効果を発揮します。
不動産投資は広がる選択肢で小口化
いまは「物件を買う」だけが不動産投資ではありません。
- 上場REIT(不動産投資信託)
- 不動産クラウドファンディング
- 小口化商品(1万円単位から)
これらを活用すれば、家計規模でもインフレ連動資産を持つことが可能です。
株式や債券と値動きの相関が低いため、全体のポートフォリオ安定にも寄与します。
結論 ― 「防衛投資」は攻めではなく整えること
インフレ時代における投資とは、“勝つ”ためではなく“減らさない”ための行動です。
円の現預金だけに頼らず、
- 外貨で通貨リスクを分散し、
- 株式・投信で企業の成長を取り込み、
- 不動産で実物資産を確保する。
こうした「三位一体の防衛投資」を整えることが、家計を長期的に守る最良の方法です。
出典・参考:
- 日本経済新聞「家計は『インフレ最適』に移行」(2025年10月28日付)
- 日本銀行「資金循環統計(2025年6月末時点)」
- 金融庁「新しいNISA制度の概要」
- 総務省「消費者物価指数(CPI)」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
