2025年10月、金(ゴールド)に続いて銀(シルバー)の価格が約45年ぶりに史上最高値を更新しました。
金と違って銀は「産業用の金属」という一面を持つため、上昇の背景や今後の動きは少し複雑です。
この記事では、初心者の方にも分かるように「なぜ今、銀がこれほど高騰しているのか」を解説します。
🌕 金より上昇率が高い!銀価格の急騰
国際指標であるロンドン現物価格は1トロイオンス=53.6ドルをつけ、昨年末から85%上昇。
同じ期間の金の上昇率(約60%)を上回っています。
日本でも田中貴金属工業の小売価格が1グラム286.88円に達しました。
背景には、
- 米国の利下げ観測
- トランプ政権への不信感からのドル離れ
- そして「現物がない!」という深刻な品薄
が重なっています。
⚙️ 「銀が足りない」— 現物不足の裏側
ロンドン市場では、実際に取引できる銀の在庫がほとんど残っていないといわれています。
その証拠に、「銀を借りる」ためのコスト(リースレート)が通常の0%近辺→一時40%台まで急上昇。
市場では、銀を手に入れたくても「貸してくれる人がいない」状況になっているのです。
🏭 銀は「安全資産」ではなく「実需資産」
金は中央銀行の外貨準備にも使われる安全資産ですが、銀は6割以上が産業用途。
特に近年は、
- 太陽光発電パネル
- 電気自動車
- 電子機器
など、脱炭素社会を支える分野での需要が急拡大しています。
一方で、銀は金のように単独で掘り出されることは少なく、多くが「副産物」として採掘されるため、
供給を増やしたくても増やせないのです。
📦 買い占めの歴史:バフェットも動かした銀市場
銀市場には過去にも有名な「買い占め事件」があります。
- 1979〜80年:ハント兄弟事件
石油で巨額の富を築いた兄弟が、世界の供給量1年分に匹敵する銀を買い占め。
価格は1オンス8ドル→50ドルへ暴騰。しかしその後、取引規制で暴落。 - 1998年:ウォーレン・バフェットの大量購入
自身の投資会社バークシャー・ハザウェイを通じて大量の銀を買い付け。市場が一時的に沸騰。 - 2021年:米SNS発の個人投資家集団(Reddit銘柄)
個人投資家が連携して銀を買い集め、短期間で急騰を演出。
歴史的に見ても、銀は価格変動が極端に大きい金属なのです。
🇺🇸 トランプ政権の関税政策が引き金に
今回の急騰では、米国の関税政策が大きく影響しています。
米政府が銀を含む6鉱物を「重要鉱物」に指定する案を出し、
「輸入制限がかかるかもしれない」との懸念が広がりました。
そのため、取引業者がロンドンから米国へ銀の現物を大量輸送する動きが起きています。
こうした“地政学リスク+物流の偏り”が、さらなる品薄を招いたのです。
📉 急落にも注意が必要
一方で、銀の値動きは非常に激しいため、短期的な急落リスクもあります。
現物が航空機で米国へ運ばれるなど流動性が高まると、
一時的に「売り」が出て価格が急落することも。
投資初心者の方は、
- 長期保有を前提とする
- 価格が落ち着くのを待つ
- 少額から積立で始める
といった慎重なスタンスが重要です。
💡 銀投資のポイント(初心者向け)
| 投資方法 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 銀地金・コイン | 現物を保有。安心感がある | 保管コスト・盗難リスク |
| 銀ETF | 手軽に取引可能 | 為替や手数料に注意 |
| 銀先物・CFD | 少額でレバレッジ可能 | 初心者にはハイリスク |
また、「金と銀の価格比(ゴールドシルバー・レシオ)」を見ると、
歴史的に銀が割安な時期は金よりも大きなリターンを生むこともあります。
ただしその分、リスクも高い点を忘れてはいけません。
🌈 まとめ:通貨への不安が「実物資産」へ向かう時代
金や銀の高騰の背景には、「通貨への信頼低下」という共通点があります。
インフレ懸念やドル離れが進む中、
「価値を守るもの」として現物資産に資金が流れているのです。
投資初心者にとって、銀は“華やかさ”のあるテーマですが、
「価格変動が激しい金属」という特性を理解した上で、
長期・少額・分散を意識することが大切です。
🪙 参考資料:
出典:2025年10月17日 日本経済新聞朝刊「銀最高値、群がる投機資金」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

