未成年でもNISAを利用できるようになる方向性が示されたことで、資産形成だけでなく「金融教育」のあり方も大きく変わろうとしています。
学校教育ではすでに家庭科で投資や資産形成が扱われるようになり、社会的にも「お金の学び」が標準化しつつあります。しかし、知識を“授業として学ぶこと”と、“自分名義の口座で運用を経験すること”には大きな差があります。
第4回では、未成年NISAを「実践型金融教育」としてどう活用できるのかを、家庭の視点から整理します。
1. なぜ金融教育が必要なのか
現代は、かつてのように「預金で増やせる時代」ではありません。
物価上昇や老後の長期化を背景に、若い世代ほど早く資産形成を始める必要があります。
金融教育が重要とされる理由は次の通りです。
- 経済の変化に対応するリテラシーが求められる
- SNSやネット上の“投資情報”に惑わされない判断力をつける
- 将来の家計管理力を高め、自立しやすくなる
- 小さな成功体験が長期的な資産形成の習慣につながる
未成年NISAは、こうした教育課題に対し、「実際のお金で経験できる」数少ない仕組みです。
2. お金を“自分ごと”として理解できる
机上の学びだけでは、投資や経済の理解が定着しにくいことがあります。
しかし、未成年NISAでは、子ども名義の口座で運用が行われるため、
- 自分のお金がどう動いているか
- 投資額がどのように増減するか
- 世界のニュースが資産にどう影響するか
といったことを“自分ごと”として実感できます。
これは、学校のテスト以上に学びの効果が高い部分です。
3. 家庭でできる「実践型金融教育」の進め方
(1)月1回の家族ミーティング
家庭での活用としておすすめなのが、月1回の資産チェックの習慣です。
- 今月の評価額はどうだったか
- 世界株式や日本株式はどう動いたか
- ニュースがどんな影響を与えたのか
- 積立額をどうするか
- 理由を説明する習慣をつける
投資判断のプロセスを“言語化”することは、金融教育の大きなポイントです。
(2)ニュースの“家庭版解説”
親が経済ニュースをかみ砕いて説明するだけで、理解は大きく深まります。
- 物価が上がる
- 金利が変わる
- 世界の株価が上下する
これらは「生活」と「投資」の両方に関わるテーマであり、家庭内の会話のレベルが自然と上がります。
(3)高校生・大学生になったら「自分で注文」も
一定の年齢になれば、実際の注文操作を一緒に行うことも教育として有効です。
- NISA枠をどう使うか
- 積立額をどう設定するか
- 商品選びの理由を説明する
投資行動に“自分の意思”を反映させる経験ができるのは、未成年NISAならではの強みです。
4. SNS投資情報との付き合い方を教える
未成年はSNSの影響を強く受けます。
X(旧Twitter)、TikTok、YouTubeなどには、誤情報や極端な投資法も多く存在します。
家庭で伝えるべきポイントは次の通りです。
- “実績のない誰かの意見”をそのまま信じない
- 投資の成功例だけに惑わされない
- 手法よりも「原則」に忠実であること
- 情報源の質を見抜く習慣をつける
未成年NISAは「実際に運用していればこそ」情報の良し悪しを判断しやすくなるため、教育的効果が高くなります。
5. 将来のキャリア形成とも相性が良い
金融や経済の理解は、将来の進路にもプラスになります。
- 大学で経済・経営系を選びやすくなる
- 起業や副業を考えるきっかけになる
- 家計管理力が高まり、社会人初期の失敗を避けやすい
特に「20代で投資を自然に続けられる人」は、長期的に大きな差がつきます。
未成年NISAでの経験は、いわば“人生の早い段階での自立トレーニング”とも言えます。
結論
未成年NISAは、単なる資産形成制度ではなく、家庭での金融教育を大きく前進させる仕組みです。
投資の仕組み、市場の動き、お金の価値とリスク――こうした基礎を学ぶのに、机上ではなく“実際の経験”ほど効果的なものはありません。
家庭の中で定期的に話し合い、ニュースを一緒に解説し、投資判断を共有する。
そんな日常的な学びの積み重ねが、子どもたちの将来の自立につながります。
次回の第5回では、
「制度改正を迎える前に家庭で知っておきたい注意点」
として、税制改正の読み方や家計の準備ポイントを整理します。
出典
・文部科学省「家庭科における資産形成教育」
・金融庁 資産形成関連資料
・内閣府 若年層の金融リテラシー調査
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
