前回までの記事で、金価格が史上初めて1グラム2万円を突破した背景と意味を整理しました。急速な円安やインフレ、世界情勢の不安を受けて「資産防衛のために金を持つべきか」と考える人が増えています。
ただし、いざ「金を買ってみよう」と思っても、方法は一つではありません。大きく分けて、
- 地金(じがね)=現物の金を持つ方法
- 積立=毎月少額からコツコツ買う方法
- ETF(上場投資信託)=証券取引所を通じて金価格に連動する金融商品を買う方法
の三つがあります。
今回はそれぞれの特徴とメリット・デメリットを比較し、自分に合った金投資の入り口を考えていきます。
1. 地金(じがね)投資 ― 「実物」を持つ安心感
特徴
- 田中貴金属や石福金属といった地金商で購入できる
- 5g・20g・50g・100gなどサイズが選べる
- 実物を手元に保管するため「金を持っている」という実感がある
メリット
- 実物資産なので、極端な金融危機でも価値を保ちやすい
- 世界中で通用し、売却も容易
- 保有しているだけで「安心感」が得られる
デメリット
- 保管場所が必要(盗難・火災リスク)
- 購入時に「手数料(スプレッド)」がかかる
- 少額から始めるにはややハードルが高い
向いている人
- 「金を実際に持っておきたい」という方
- 長期的に相続や資産保全のために保有したい方
2. 金積立 ― 「少額からコツコツ」始められる
特徴
- 銀行や証券会社、地金商で提供されているサービス
- 毎月1,000円や5,000円など少額から購入可能
- 積立額に応じて「グラム数」で自動的に買い付け
メリット
- 無理のない金額で続けられる
- ドルコスト平均法で価格変動リスクを抑えられる
- 実物引き出しサービスがあるところも多い
デメリット
- 売買手数料や保管料がかかることがある
- 短期間では大きな利益を期待しにくい
- 実物をすぐに手にできるわけではない
向いている人
- 投資初心者や若年層
- 「まとまった資金はないが、毎月コツコツ貯めたい」人
- 長期の資産形成を目的とする人
3. 金ETF(上場投資信託) ― 流動性と手軽さ
特徴
- 証券会社を通じて株式と同じように売買可能
- 代表的な商品に「SPDRゴールドシェア(GLD)」や「純金上場信託(1540)」など
- 金価格に連動する金融商品であり、現物を手にするわけではない
メリット
- 株と同じように市場で売買でき、流動性が高い
- 売買コストが比較的低い
- 数千円単位から投資可能
デメリット
- 現物を手元に持てない
- 為替の影響を受ける(海外ETFの場合)
- 信託報酬(管理費用)がかかる
向いている人
- すでに証券口座を持ち、株や投資信託に慣れている人
- 売買の機動性を重視する人
- 現物ではなく「価格変動への投資」を目的とする人
4. 三つの方法を比較
| 項目 | 地金 | 積立 | ETF |
|---|---|---|---|
| 最低投資額 | 数万円〜数十万円 | 月1,000円程度〜 | 数千円〜 |
| 保有形態 | 実物 | 証書(引き出し可) | 金価格連動証券 |
| 流動性 | △(売却は地金商で) | △(積立会社を通じて) | ◎(市場で売買可能) |
| リスク | 盗難・保管リスク | 長期継続が前提 | 為替リスク、管理費用 |
| 向いている人 | 安全資産として保有したい人 | コツコツ貯めたい人 | 機動的に取引したい人 |
5. どう選ぶべきか?
選び方は「何を重視するか」で変わります。
- 安心感を重視 → 地金
- 無理なく続けたい → 積立
- 売買のスピード・効率性を重視 → ETF
必ずしもどれか一つに決める必要はありません。例えば「日常の積立で金をコツコツ増やしつつ、一部を地金で保有」という組み合わせも有効です。
おわりに
金価格が2万円を突破し、多くの人が金投資に関心を持ち始めています。とはいえ、重要なのは「投資の目的を明確にすること」です。インフレから資産を守りたいのか、短期の値動きを狙いたいのか、それによって最適な方法は異なります。
次回(第4回)は、金投資と株式・債券・不動産といった他の資産との比較を通じて、「分散投資の中で金をどう位置づけるべきか」を整理していきます。
📌 参考
- 金1グラム2万円を突破 高値でも購入、インフレ下で資産防衛(日本経済新聞, 2025年9月29日)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
