このシリーズでは「金利上昇」というテーマを軸に、家計にどう影響し、どのように対応すべきかを4回に分けて解説してきました。
- 第1回:住宅ローン
- 第2回:預金と国債
- 第3回:社債とREIT
- 第4回:株式とインフレ対策
本記事では、それらを総合的にまとめ、金利上昇時代を賢く乗り切るための「行動指針」を整理します。
1. 住宅ローン編:固定か変動か
ポイント
- 固定金利型 → 将来の金利上昇リスクを避けたい人向け
- 変動金利型 → 当面は低金利を享受できるが、将来の上昇リスクあり
判断基準
- 繰上げ返済余力がある → 変動型でも対応可能
- 家計に余裕がない/教育費が重なる → 固定型で安定化
まとめ
「安心を買う」なら固定、「低金利を活かす」なら変動。
どちらを選んでも「無理のない返済計画」が前提です。
2. 預金と国債編:守りの資産
預金
- 金利上昇局面では 短期定期(1年以内) が基本。
- キャンペーン金利は「おまけ」と割り切って使う。
個人向け国債
- 変動10年 → 金利上昇メリットを享受、長期金利に連動。
- 固定3年・5年 → 使う時期が決まっている資金(教育費など)に最適。
まとめ
「流動性は預金」「確実性は固定国債」「インフレ対応は変動国債」という住み分けがポイントです。
3. 社債とREIT編:利回りを高める
社債
- 国債より高利回り(1.5~2%程度)。
- 信用リスク(発行企業の倒産)に注意。
REIT
- 分配金利回りは4%前後。
- インフレに強いが、価格変動リスクも大きい。
まとめ
「安定収益を求めるなら社債」「高配当とインフレ対応ならREIT」。
国債と組み合わせることで全体のバランスが取れます。
4. 株式とインフレ対策編:攻めの資産
株式の強み
- インフレ時に企業の売上・利益が伸びやすい。
- 値上がり益と配当収入の両面で資産を守れる。
世代別戦略
- 20~40代 → 株式中心で積立投資(インデックス投資・NISA・iDeCo)
- 50~60代 → 株式と債券を半々程度にして守りを重視
- 65歳以降 → 株式比率は20%前後に抑え、生活資金を確保
まとめ
「株式なし」ではインフレに弱くなる可能性大。ライフステージに応じて適度に組み込むことが大切です。
5. 全体像を比較表で整理
| 項目 | 安全性 | 利回り | 流動性 | インフレ耐性 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|---|
| 預金 | ◎ | △ | ◎ | × | 生活費・緊急資金 |
| 国債(変動10年) | ◎ | ○ | ○ | ○ | 長期安定+インフレ備え |
| 国債(固定3年・5年) | ◎ | ○ | △ | × | 教育資金・使途が決まっている資金 |
| 社債 | ○ | ○ | △ | △ | 元本保証を重視しつつ利回りも欲しい人 |
| REIT | △ | ◎ | ◎ | ○ | 高配当・インフレ対策を狙う人 |
| 株式 | △ | ◎ | ◎ | ◎ | 長期投資・資産形成世代 |
6. 実践シナリオ
シナリオA:30代共働き夫婦
- NISAで株式インデックス投資(年間120万円)
- 預金:生活費6カ月分
- 変動10年国債:200万円
シナリオB:50代教育費ピーク世帯
- 固定5年国債:300万円(子どもの大学費用用)
- 社債:200万円
- 株式(高配当株):200万円
シナリオC:60代退職後夫婦
- 預金:300万円
- 変動10年国債:300万円
- REIT:100万円
- 株式(生活必需品株):100万円
おわりに
金利上昇時代は、「借りるお金」だけでなく「運用するお金」にも影響を与えます。
- 住宅ローンはライフプランに合わせて固定か変動を選ぶ
- 預金・国債で生活防衛資金を確保
- 社債・REITで利回りをプラス
- 株式でインフレに備える
こうした組み合わせを、自分の世代やライフステージに合わせて調整することが、資産を守り、育てる最良の戦略です。
👉 参考記事
- 〈マネー相談 黄金堂パーラー〉金利を知る(下) 家計への影響と対応(日本経済新聞 2025年9月24日)
- 国債「固定3年・5年」購入も(日本経済新聞 2025年9月24日)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

