金利は「お金の値段」とも言われ、時代の経済環境を映す鏡です。振り返ってみると、日本の金利はこの半世紀で大きな変化を経験してきました。今回は、金利の歴史的な推移をたどりながら、そこから家計に役立つ教訓を学んでみましょう。
バブル期の「高金利時代」
1980年代後半の日本は、資産価格が急騰した「バブル経済」の真っただ中でした。当時の住宅ローン金利は 6〜8%台。
例えば3,000万円を借りて金利8%の35年ローンを組むと、総返済額はなんと 約8,400万円 にも達します。いかに高金利が家計の負担になっていたかが分かります。
ただし、当時は物価も賃金も右肩上がりでした。金利負担は大きくても、「給与が上がるから返せる」という見通しがあったのです。
「失われた30年」と超低金利の時代
1990年代にバブルが崩壊し、日本経済は長期の低迷に入りました。景気を刺激するため、日銀は政策金利を段階的に引き下げ、2000年代にはほぼゼロ水準へ。
2008年のリーマンショック後はデフレ圧力が強まり、2016年にはついに マイナス金利政策 を導入。
この間、住宅ローン金利は1%前後に低下し、借り手にとっては歴史的な「超低金利時代」が続きました。
- 借金する人にとって:金利負担が小さく、マイホーム取得がしやすい環境
- 貯金する人にとって:預金にほとんど利息がつかず、資産形成が進みにくい時代
つまり、金利の低下は「借りる人」には追い風、「貯める人」には逆風だったのです。
海外との比較から見えるもの
この間、アメリカや欧州はインフレ率に応じて利下げと利上げを繰り返してきました。
- アメリカ:リーマンショック後にゼロ金利にしたが、その後は経済回復とともに利上げを実施。
- 日本:デフレから抜け出せず、ゼロ金利をほぼ常態化。
結果として「世界では金利が上下に動くのが普通だが、日本はずっと低金利」という特殊な状況が生まれました。
教訓① 「金利は変わりうる」という前提に立つ
長く低金利が続いたため、「金利はずっと低いまま」と考えがちです。しかし歴史を見れば、金利は時代によって大きく動くものだと分かります。
- 高金利時代:返済負担は重くなるが、預金や債券での利息収入は増える
- 低金利時代:借入は有利だが、貯蓄は増えにくい
金利は固定されたものではなく、状況によって変化する。その前提でライフプランを考える必要があります。
教訓② 「借金」と「貯蓄」のバランスを見直す
バブル期の人々は「借金の返済が大変でも、給与が伸びるから大丈夫」と思っていました。
一方、超低金利時代の私たちは「貯金しても増えないから、投資を考えなければ」と意識が変わりました。
つまり、金利の水準次第で「正しい家計戦略」が変わるのです。
- 高金利なら「貯蓄や債券で利息収入を得る」
- 低金利なら「借入を有利に活用する」
歴史を知れば、時代ごとに異なる戦略をとる重要性が見えてきます。
教訓③ 「金利と物価の関係」を意識する
バブル期の高金利が許容できたのは、給与も物価も上がっていたからです。逆に低金利時代は、物価が上がらないデフレが背景でした。
金利単体で判断するのではなく、物価とセットで考えることが大切です。実質的に資産価値が増えるのか、目減りするのかは、このバランスで決まります。
まとめ
日本の金利の歴史を振り返ると、次の3つが見えてきます。
- 金利は大きく変動するものであり、固定的に考えてはいけない
- 借金と貯蓄の有利・不利は、金利水準によって逆転する
- 金利は物価と連動しており、両者を合わせて判断することが重要
過去を知ることは未来を読む手がかりになります。長期の視点で金利を捉える習慣を持つことで、家計戦略をより柔軟に調整できるようになるでしょう。
📌参考:日本経済新聞(2025年9月17日付夕刊)マネー相談「黄金堂パーラー」、日銀公表資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
