これまで3回にわたって、金利の基本、家計への影響、備え方を見てきました。今回は視野を広げ、世界各国の金利動向と、それに対する日本の位置づけを考えてみましょう。グローバル経済の中で日本がどう影響を受けるのかを知ることは、私たちの生活や資産運用にも直結します。
世界は「高金利時代」に突入?
アメリカ(FRB)
アメリカの中央銀行にあたる FRB(連邦準備制度理事会) は、インフレ抑制のために2022年以降、大幅な利上げを繰り返しました。政策金利は一時5%以上に達し、住宅ローンやクレジットカード金利も大幅に上昇。消費者の負担は増しましたが、景気の過熱を抑える効果を狙ったものです。
最近ではインフレ率がやや落ち着き、利上げは停止していますが、「高金利をしばらく維持する」という姿勢を明確にしています。
ヨーロッパ(ECB)
欧州中央銀行(ECB)もアメリカ同様に利上げを実施しました。ユーロ圏はエネルギー価格の高騰やウクライナ情勢の影響でインフレが深刻化したためです。政策金利は4%台まで引き上げられ、消費や投資の冷え込みが懸念されつつも、物価安定を優先する動きが続いています。
新興国
ブラジルやトルコなどの新興国は、通貨安や物価上昇に対応するため、さらに高い政策金利を設定しています。20%を超える金利も珍しくありません。高金利は通貨防衛やインフレ対策には有効ですが、経済成長の足かせにもなっています。
日本の「特殊な立ち位置」
それに比べて日本は長年「超低金利」が続きました。マイナス金利政策が導入されていたのは世界でも珍しい状況です。
しかし、2024年にマイナス金利が解除され、2025年には政策金利が0.5%まで引き上げられました。とはいえ、依然として世界と比べれば「極めて低い」水準です。
- アメリカ:5%台
- 欧州:4%前後
- 日本:0.5%
この差は、為替市場にも大きく影響します。
金利差と為替レートの関係
一般的に、金利が高い国の通貨は買われやすく、金利が低い国の通貨は売られやすくなります。
- 米国の金利が高い → ドルを持っていれば利息がつく → 投資資金がドルに流入 → ドル高
- 日本の金利が低い → 円を持っても利息が少ない → 円が売られる → 円安
実際、日米金利差の拡大が、ここ数年の円安の大きな要因になっています。2025年現在も、1ドル=150円前後という歴史的な円安水準が続いています。
家計にどう影響する?
金利差や為替動向は、私たちの生活にも直結します。
- 輸入品価格の上昇
原油や小麦などを輸入に頼る日本では、円安によって生活必需品の値上げが加速します。 - 海外旅行費用の増加
円安でドルやユーロ建ての旅行費用が高くなり、海外旅行が割高に。 - 海外投資のリターン
一方で、外貨建て資産を持っている人にとっては円安が追い風になります。ドル建て債券や海外株式を円に換算すると評価額が増えるからです。
世界と日本の金利のバランスを読む
金利は「物価」「景気」「為替」が複雑に絡み合って決まります。
- アメリカや欧州が高金利を維持する
- 日本はインフレを抑えるために徐々に利上げを進める
- ただし急激な利上げは景気悪化を招くため慎重に進めざるを得ない
こうした状況を踏まえると、しばらくは「世界は高金利、日本は低金利」という構図が続く可能性が高いといえます。
まとめ
世界各国がインフレ抑制のために高金利を続ける中で、日本は依然として低金利水準にあります。この金利差が為替を動かし、円安や物価高という形で私たちの暮らしに影響しています。
国際ニュースで「FRBが利下げへ」といった見出しを見かけたら、それは日本の金利や円相場、そして家計にも波及する可能性があるということ。少しだけでも金利に関心を持つと、世界経済の動きが身近に感じられるはずです。
📌参考:日本経済新聞(2025年9月17日付夕刊)マネー相談「黄金堂パーラー」ほか
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
