「最近、金利が上がっているみたいだけど、家計にも影響しそうですね」
そんな声を聞くことが増えてきました。ニュースで「長期金利が上昇」「日銀が利上げ」といった言葉が並ぶと、なんとなく不安になりますよね。でも、金利といっても種類があり、ニュースで取り上げられるポイントもさまざまです。今日はその基本から整理してみましょう。
短期金利と長期金利の違い
金利は大きく「短期」と「長期」に分けられます。
- 短期金利:1年未満のお金の貸し借りに適用される金利。
- 長期金利:1年以上の貸し借りに関する金利。
短期金利は中央銀行(日銀)が市場に流すお金の量をコントロールすることで決まります。日本では「無担保コール翌日物」という、銀行同士が1日だけ資金をやり取りする際の金利が代表的な指標です。これを日銀が政策として誘導しており、「政策金利」と呼ばれています。
一方、長期金利は国債(国の借金)の売買で決まります。特に10年物国債の利回りが一般的な指標です。
国債の価格と金利の関係
ここで少し仕組みを見てみましょう。
仮に「1年後に元本100円と利子2円(利率2%)」を受け取れる国債があったとします。
- 発行時に100円で買えば、利回りは2%。
- もし人気が出て国債の価格が101円に上がれば、1年後に102円を受け取っても利益は1円。利回りは約0.99%に低下します。
- 逆に価格が99円に下がれば、3円の利益となり、利回りは約3.03%に上昇します。
つまり、国債価格が上がると利回りは下がり、価格が下がると利回りは上がる。この逆の関係が長期金利の動きを理解するカギです。
いま長期金利が上昇している理由
2025年9月現在、日本の長期金利は17年ぶりの高水準となり、10年物国債利回りは一時1.64%まで上昇しました。さらに30年物国債は3.2%を超え、過去最高を記録しました。
なぜ金利が上がっているのでしょうか?
① インフレ(物価上昇)の影響
物の値段が上がると、お金の価値は相対的に下がります。もし国債の利回りが低いままだと、投資家にとって「持っているだけで損」になってしまいます。そのため、新しく発行する国債は高めの利回りをつけないと買い手が集まりません。その結果、既に発行された国債の価格は下がり、利回りは上がるのです。
② 日銀の利上げ観測
昨年、日銀はマイナス金利を解除し、段階的に政策金利を引き上げてきました。現在は0.5%ですが、インフレ抑制のために年内にも追加利上げをするのでは、という見方が強まっています。短期金利の上昇が、長期金利にも影響を与えています。
③ 財政不安
さらに、日本の財政への懸念も背景にあります。7月の参院選では「消費税減税」「給付金支給」などが議論されましたが、いずれも国債増発につながりかねません。すでに多額の国債を抱える日本が、さらに借金を増やすことに市場が不安を抱き、「より高い利回りを求める」動きにつながっているのです。
家計への影響
金利の上昇は、私たちの生活にも少しずつ影響してきます。
- 住宅ローン:固定金利型の新規契約は金利が上がり、返済額が増える可能性。
- 預金:一方で、普通預金や定期預金の金利は上昇傾向。ただし上がり幅は小さいため、まだ実感は薄いかもしれません。
- 投資:株式市場は金利上昇に敏感。借入コストが増え、企業収益に影響が及ぶため株価の下押し要因となります。
まとめ
金利は「お金の値段」です。
短期金利は日銀の政策によって、長期金利は国債市場によって決まります。インフレ、金融政策、財政状況――これらの要因で金利は変化し、私たちの家計や資産形成にじわじわと影響を及ぼします。
次回は「金利が上がるとどんなメリット・デメリットがあるのか」、家計目線でさらに掘り下げてみましょう。
📌参考:日本経済新聞(2025年9月17日付夕刊)マネー相談「黄金堂パーラー」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
