金価格2万円突破の“続報”ー売却から購入へ、若年層の参入、最低賃金との対比

FP
緑 赤 セミナー ブログアイキャッチ - 1

1. 金価格2万円突破、その後の市場

2025年9月29日、国内の金価格が初めて1グラム=2万円を超えました。田中貴金属工業の小売価格は2万18円。東京・銀座の「ギンザタナカ」には朝から数十人が列をつくり、モニターに表示された価格を見て「もっと早く買っておけばよかった」と漏らす姿もありました。

通常であれば「高値更新=売却のチャンス」という行動が目立ちます。実際、9月初旬に金が1万8,000円台を付けたときには、高齢者を中心にアクセサリーや地金を売る動きが多く見られました。ところが今回は様相が違います。2万円という節目を前にしても、むしろ購入意欲が強まっている のです。


2. 売却から購入へ ― 投資行動の転換点

これまでの日本では、金価格が上がると「今のうちに売って利益を確定しよう」という発想が一般的でした。しかし、今回の局面では逆に「これからもっと上がるかもしれない」「インフレから資産を守りたい」という心理が優勢になっています。

つまり、金は「売る対象」から「持ち続ける/新たに買う対象」へと認識が変わりつつあるのです。この転換は、金が単なる投機商品ではなく、長期的な資産防衛の道具として受け入れられ始めた証拠 といえるでしょう。


3. 若年層が主要な投資層に

もう一つの大きな変化が投資層の広がりです。田中貴金属工業の新規口座開設に占める20~30代の割合は、2023年には2割程度でしたが、今では3割近くに達しました。特に30代は40~60代と並ぶ「主要な購買層」に成長しています。

これまでは「退職金を金に換える高齢者」というイメージが強かった金投資ですが、現在は「現役世代が貯蓄の一部を金で持つ」スタイルに変化しています。若年層にとって金はもはや「遠い存在」ではなく、NISAやiDeCoと並ぶ資産形成の選択肢の一つになりつつあるのです。


4. 最低賃金で見る「金の割高感」

今回の記事で新鮮だったのは「最低賃金との比較」です。

  • 2001年度:2時間働けば1グラムの金が買えた
  • 2025年度:18時間近く働かないと1グラムが買えない

この数字は、金がどれほど生活者にとって“高嶺の花”になったかを物語っています。インフレ時代に資産防衛の手段としての役割を持つ一方で、実際に買うためのハードルはかつてなく高くなっている のです。

この「割高感」は二重の意味を持ちます。

  1. 働く人の購買力が低下している現実を突きつける
  2. それでも人々が金を求めるのは、通貨や物価への不安がそれ以上に強いから

5. 通過点としての2万円

マーケットアナリストの豊島逸夫氏は「2万円は到達点ではなく通過点に過ぎない」と語ります。国際市場では1トロイオンス=4,000ドルが視野に入り、世界の中央銀行や機関投資家が買いを継続しているためです。

この見方は、金の2万円突破が「一時的な高騰」ではなく、日本経済におけるインフレ定着・円安進行という構造変化 を反映していることを示しています。


まとめ ― 変わる金の意味

今回の続報で浮き彫りになったのは、次の三点です。

  1. 売却から購入へ:価格上昇局面でも「買い」が優勢に
  2. 若年層の本格参入:20~30代が新しい主要層に
  3. 生活者目線の割高感:最低賃金換算で18時間労働=1g

金はもはや「一部の人が持つ資産」ではなく、日本人の資産形成において確実に存在感を増しています。高値でも買われる背景には、円の価値低下やインフレ定着という経済の構造的変化があります。

2万円突破はゴールではなく、日本の資産形成が大きく変わる通過点。この節目をきっかけに、私たちは改めて「お金の置き場所」を問い直す必要があるのかもしれません。


📌 参考


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました