金価格急落が示した「安全資産」の限界――4兆ドル消失から読み解く投資マネーの変質

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2026年1月末、金(ゴールド)価格が歴史的な急落を記録しました。
わずか1日で時価総額が約4兆ドル失われたという数字は、単なる価格調整ではなく、金を巡る投資環境の変化を象徴しています。
本稿では、今回の急落の背景を整理しつつ、「安全資産」としての金が抱える構造的なリスクについて考えてみます。

史上最大級の下落が起きた理由

金の国際指標であるロンドン現物価格は、1月29日に1トロイオンスあたり約5600ドルと過去最高値を付けました。しかし翌30日には約10%下落し、1日の下落幅としては過去最大級となりました。

この急落は、長期的な需給悪化というよりも、短期間に集中した投機マネーの巻き戻しによるものと考えられます。
上昇局面で積み上がった利益確定売りが、一斉に表面化した結果でした。

「安全資産」から「投機商品」へ

金は長年、戦争や金融危機の際に価値を保つ資産として位置づけられてきました。
供給量が限られ、通貨のように増刷できない点が、その信頼性を支えてきたからです。

しかし近年、金を巡る環境は大きく変わっています。
ETFの普及により、金は誰でも簡単に売買できる金融商品となりました。
その結果、本来は価格変動が緩やかであるはずの金に、短期的なリターンを狙う資金が大量に流入する構造が生まれました。

投資需要の急拡大がもたらした歪み

国際調査機関によれば、2025年の金の投資需要は前年から大幅に増加し、採掘量のかなりの割合を占める規模に達しています。
特にETFへの資金流入は急激で、価格形成に与える影響も無視できなくなっていました。

需要が強い状況自体は価格を押し上げますが、そこにレバレッジ取引が重なることで、相場は本来の「安全資産」の範囲を超えた値動きを示すようになります。
今回の急落は、その歪みが一気に修正された局面といえます。

きっかけとなった金融政策観測

急落の直接的な材料となったのは、米国の金融政策を巡る人事でした。
次期FRB議長に金融引き締め志向とみられる人物が指名されたことで、金利上昇を警戒する動きが強まりました。

金は利息を生まない資産です。
金融引き締めが意識される局面では、相対的な魅力が低下しやすく、利益確定売りが出やすい構造にあります。
今回も、そのタイミングを待っていた投資家の売りが連鎖的に広がりました。

急落後も続く「買い」の動き

興味深いのは、急落後に実物の金を購入する動きが目立った点です。
価格調整を「買い場」と捉える投資家は依然として存在し、短期の値動きと長期の資産分散を切り分けて考える姿勢がうかがえます。

実際、中央銀行による金の保有拡大や、地政学リスクの高まりといった中長期の要因は、大きく変わっていません。

投資家が意識すべき視点

今回の急落が示したのは、「安全資産=価格が安定している」という前提が揺らいでいる現実です。
金であっても、投機マネーが集中すれば、株式や暗号資産に近い値動きを示すことがあります。

重要なのは、

  • 短期の価格変動に振り回されないこと
  • 金を万能な避難先と考えないこと
  • 他の資産との分散を前提に位置づけること

といった基本的な視点です。

おわりに

金価格の急落は、多くの投資家にとって衝撃的な出来事でした。
しかし同時に、「安全資産」という言葉に潜む思い込みを見直す機会でもあります。

長期的な価値保存という金の特性自体が失われたわけではありません。
ただし、その過程での値動きは、もはや決して穏やかではないという現実を、今回の4兆ドル消失ははっきりと示しました。


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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