金価格にさらなる上振れリスク 米国「奇策」の影響とは?

FP
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9月9日、ニューヨーク金先物価格が一時1トロイオンスあたり3700ドルを超え、史上最高値を更新しました。背景には米国の利下げ、インフレの持続、そして地政学リスクがあります。加えて、今回新たに注目すべき要素として、米国による「ゴールドリザーブ(金備蓄)の再評価」という奇策が浮上しています。これは金市場にとって強力な追い風となる可能性があるのです。

流動性相場とスタグフレーションの懸念

今のマーケットは「流動性相場」です。日米ともに金融政策がハト派に傾き、金利低下を背景に株価や金価格が同時に上昇しています。しかし景気の実態は弱く、米国の雇用統計は悪化。物価が高止まりする一方で景気が冷え込む「スタグフレーション」の兆しが見えています。

このような状況での利下げはインフレを加速させかねませんが、金価格にとってはプラス要因となります。なぜなら、金は「通貨価値の減少に対する保険」として買われやすいからです。

脱ドル依存と地政学リスク

金のもう一つの追い風が「脱ドル依存」の流れです。中国、ロシア、インドといった新興国を中心に、米国中心の国際秩序に対抗する枠組みが広がっています。欧州も対米関係で不満を抱える中、ドルに代わる資産として金の需要が増す構図です。国際政治の不安定化は、金備蓄の「安全資産」としての価値を高めます。

ゴールドリザーブ再評価のインパクト

今回特に注目されるのが、米国が保有するゴールドリザーブの再評価です。米財務省は2億6150万トロイオンスを保有していますが、現在は1トロイオンス約42ドルという歴史的な簿価で計上されています。市場価格に合わせるだけで1兆ドル近い含み益が生じ、財政赤字の穴埋めに使えるというのです。

これは単なる会計上の調整に見えますが、実際にはドル供給を増やす効果を持ち、金価格の上昇要因となります。もし米国が市場価格以上、例えば「5000ドル」で再評価を行えば、一挙に財源が増える一方でドルの信認は揺らぎかねません。
1934年に米国が金価格を引き上げた際には、事実上ドルの切り下げを意味し、ドル価値は4割下落しました。今回も同様のリスクをはらみます。

投資家にとっての意味

株価は割高感が強まり調整リスクが高まる一方、金価格については「上振れリスク」がむしろ高まっているといえます。
金の現物や投資信託、ETFといった商品を「持たざるリスク」が増している環境です。短期的な変動はあっても、中長期では金価格を押し上げる要素が積み重なっていると考えられます。


まとめ

  • 金価格は史上最高値を更新し、今後も上昇余地あり
  • 利下げ・インフレ・地政学リスクが金を支える
  • 米国の「ゴールドリザーブ再評価」プランが新たな注目材料
  • 株価調整リスクが高まる中、「金を持たざるリスク」が強まっている

(参考:日本経済電子版 2025年9月20日記事)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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