1. プラザ合意から40年 ― 変わる世界の通貨秩序
1985年のプラザ合意は、ドル高是正を目的とした国際協調の象徴でした。各国がドルを基軸に動いた時代は、その後40年続きました。
しかし2025年のいま、米国の財政赤字、貿易戦争、地政学リスクの高まりを背景に「ドル一極支配」への信認が揺らいでいます。その象徴が、中央銀行による金保有の急拡大です。
2. 金の復権とその限界
世界の中銀が金を積み増し、金価格は2年で倍増。人民元建て金取引の拡大も進んでいます。金は「通貨に左右されない究極の安全資産」として再評価されています。
ただし、金は利息を生まず、価格が長期停滞するリスクもあります。資産全体の“守り”としては有効ですが、“攻め”や安定収入を期待する投資先ではありません。
3. 実物資産の役割
金だけに依存せず、以下の資産を組み合わせることで分散効果を高めることができます。
- 不動産(REIT含む):賃料収入やインフレ耐性。
- エネルギー・資源関連:地政学リスクや新産業の需要を背景に価格が変動。
- 農産物・食料関連:インフレや異常気象で価格が上がりやすい。
- インフレ連動国債:安全性が高く、インフレ防衛策として有効。
これらをバランスよく取り入れることで、「通貨不安」「インフレ」「市場変動」への耐性が増します。
4. 個人投資家の実践的アプローチ
最終的な指針は「分散」と「長期視点」です。
- 金:資産の5〜10%程度を配分し、非常時の安全弁に。
- 不動産・REIT:10〜20%を割り当て、安定収益源とする。
- 株式・債券:残りを基盤としつつ、成長性と流動性を確保。
- その他:資源や農産物ETFを少額取り入れ、インフレ耐性を強化。
こうした配分を長期的に維持することが「通貨Gゼロ時代」の防衛戦略になります。
5. 新秩序の足音
著名投資家レイ・ダリオ氏が語るように、これから数年は金融・経済・政治の大きな変動が予想されます。
基軸通貨ドルの地位が相対的に低下し、金や人民元、資源といった多様な資産が国際秩序を支える一角を担う可能性があります。
個人投資家もまた「ドル依存の常識」から一歩踏み出し、多様な資産を組み合わせることが生き残りの条件となるでしょう。
シリーズまとめ
- 中央銀行は「ドルから金へ」とシフトを始めている。
- 個人投資家も金をはじめとする実物資産をポートフォリオに組み入れるべき。
- ただし金一本槍ではなく、不動産・資源・インフレ連動国債などとの分散が不可欠。
- 「通貨Gゼロ」の時代は基軸なき世界。だからこそ、長期分散投資が資産防衛の要となる。
👉参考:日本経済新聞 2025年9月22日付 朝刊
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

