1. 金の限界と補完資産の必要性
金は「価値の保存手段」として注目されていますが、万能ではありません。価格変動の大きさや、インカム(利息・配当)を生まない点は投資家にとって課題です。
そこで重要になるのが「金以外の実物資産」との組み合わせです。インフレ環境や通貨不安に強い資産を複数持つことで、より安定した資産防衛が可能になります。
2. 不動産(REIT含む)
不動産は「居住・利用価値」という実需に裏付けられた資産です。物価上昇局面では賃料も上昇しやすく、インフレに対して相対的に強いとされます。
- 直接投資:現物不動産は流動性や管理コストの問題があるが、長期保有なら安定感。
- REIT(不動産投資信託):少額から分散投資でき、賃料収入に基づく分配金を得られる。
ただし、金利上昇局面ではREIT価格が下落しやすい点には注意が必要です。
3. エネルギー・資源関連
原油や天然ガス、銅・リチウムなどの資源も実物資産の一種です。特に地政学リスクや供給不安が高まると価格が跳ね上がることがあります。
個人投資家が直接原油を買うのは現実的ではないため、資源株やコモディティETFを通じて投資するのが一般的です。
世界が脱炭素やEVシフトに向かう中で、リチウムやニッケルといった新しい戦略資源も投資対象として注目されています。
4. 農産物・食料関連
インフレ局面では生活必需品の価格が最も早く上昇します。トウモロコシや小麦、大豆といった農産物価格は、世界的な異常気象や地政学リスクの影響を強く受けます。
農産物ETFや、食料関連企業への株式投資を通じて分散効果を得ることが可能です。
5. インフレ連動国債という選択肢
「実物資産」ではありませんが、インフレに応じて元本や利息が増減するインフレ連動国債は、金融商品でありながらインフレヘッジ手段として有効です。日本でも個人向け国債として発行されており、堅実派の投資家に適しています。
6. ポートフォリオにどう組み込むか
- 金:5〜10%
- 不動産・REIT:10〜20%
- 資源・エネルギー関連:5〜10%
- 株式・債券:残りのバランス
あくまで一例ですが、このように複数の実物資産を組み合わせることで「金一本槍」では得られない安定性を確保できます。
7. 新秩序への備えとして
「通貨Gゼロ」の時代は、ドルの信認が揺らぎ、金や人民元、さらには資源や不動産といった実物資産が相対的に存在感を高める時代です。
個人投資家にとっても、従来の「株と債券の比率」だけではなく、実物資産の比重を見直すことが必要になっています。
まとめ
- 金は有効なヘッジ手段だが万能ではない。
- 不動産・資源・農産物・インフレ連動国債など、多様な実物資産がインフレ時代の防衛線となる。
- ポートフォリオの一部に実物資産を組み入れ、長期的な安定性を追求することが大切。
- 新秩序をにらみ、ドル依存から脱却する世界の流れを個人投資にも応用すべき時代に入った。
👉参考:日本経済新聞 2025年9月22日付 朝刊
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
